
大町市大町の北安醸造の杜氏(とうじ)・山﨑義幸さん(56)の好きな言葉は「酒屋万流(さかやばんりゅう)」。蔵独自の考えや造り方があり、地域の歴史や風習に根付いた蔵ごとの多種多様な味わいがあっていい―。酒の世界の奥深さを表しており、自身もこの言葉を具現化する酒造りに挑戦している。
蔵伝統の味守りつつ挑戦も
米は松川村など大北地域産を主に、県内産を使用。同市の居谷里湿原周辺が水源の湧水で、超軟水の水道水「女清水(おんなみず)」で仕込む。
「酒は料理と一緒に味わうもの。食中酒の本質は外したくない」が信念。「甘口」という蔵の古くからの味の基本は踏襲しつつ「酒屋万流」のスタンスで、落ち着いた香りと濃厚な味わいが親しまれる。
夏場は自宅がある松川村で、原料の酒米の栽培に自らも取り組み、「うちの蔵の酒造りに適した米づくりも研究したい」。今後は、蔵に宿る「蔵付き酵母」での酒造りへの挑戦が目標だ。
愛知県出身。大学卒業後、東京に本社があるシステムコンサルティング会社に就職。登山のため信州を訪れるようになり、1997年に白馬村に移住。土木関係の仕事を経て、日本独自の伝統的な仕事に興味が湧き、2002年に北安醸造に入社。小谷杜氏の下で働き、先代杜氏の引退に伴い07年からその後を引き継いでいる。
私生活でも、50歳を過ぎてピアノを始めるなど、チャレンジ精神旺盛だ。「興味があれば何でも研究したい。できないことができるようになるのが面白く、酒造りも同じ」とほほ笑みながら、「酒は自分の意図したイメージにはほぼならない。だからこそ、工夫のしがいがいっぱいある」。
子どものように目を輝かせながら、酒造りの醍醐味(だいごみ)を語る姿に、可能性を広げていく決意も感じた。
【沿革】
ほくあんじょうぞう 1923(大正12)年創業。大黒町に鎮座する大黒天にあやかり「大國正(だいこくまさ)宗(むね)」の銘柄で製造を始め、後に「北安大國」に改名した。生酛(きもと)仕込みの「居谷里」もある。
【山﨑さんおすすめこの1本】
北安大國純米酒七十(1・8リットル2200円)
【相性のいい料理】
肉じゃがなどの煮物
【連絡先】
北安醸造TEL0261・22・0214