
「子どもの頃から、いつもそばには犬がいた」。愛犬家の小岩井映元(てるもと)さん(82、山形村)は、現在飼っている3匹の柴犬をいとおしそうに見つめながら、自身の半生をそう振り返る。愛犬で展覧会に何度も挑戦。10年前からは、個人でブリーダー活動を始めるなど、犬は生活の一部で家族同然。しかし、病や高齢化もあり、徐々に飼育が困難に。これから、犬とどう付き合っていくか─。「老父」は大きな悩みを抱えている。
柴犬を愛し大切に飼育
小岩井さんは1971年、妻・立子さん(77)と結婚。新婚旅行から帰ってきた翌日、貨物車で運ばれてきた犬が広丘駅に届いた。これが結婚して初めて飼った犬。狩猟をしていた小岩井さんの相棒として迎えた猟犬のポインター犬だった。その後、同じ猟犬のセッター犬も飼い、犬の展覧会にも参加した。
猟をやめ、しばらくは犬と離れたが、やっぱり、犬のいない生活は考えられなかった。今から10年以上前のある日、立子さんが仕事から帰ってくると1匹の雌の柴犬が自宅にいた。名前は「ももちゃん」に決めた。
「犬を飼うなんて、そんな話は聞いていない」と詰め寄った立子さんに、夫は「前もって話をすると反対されるから」と、いたずらっ子のように笑った。こうした「予期せぬこと」は、その後も何度かあったという。
以後、柴犬を愛するようになった小岩井さん。公益社団法人日本犬保存会に所属。ももちゃんを連れて、あちこちの展覧会に参加し、支部展で上位に入賞したこともある。
柴犬は日本犬の中で唯一の小型犬種。「きれい好きで、トイレの始末の仕方がいい」と、その特長を話す小岩井さん。
それまでは、もっぱら展覧会に出陳するだけだったが、犬仲間からの勧めもあり、犬を繁殖させ、子犬を育てて販売するブリーダーを目指すことに。新潟県まで出かけて講習を受けるなどして2015年、第一種動物取扱業に登録。柴犬のブリーディングを始めた。
犬を大切に、飼育できる範囲で─がブリーダーとしてのモットー。「いい犬を残したい」と、兵庫県の展覧会まで出向き、ほれ込んだ柴犬のきょうだいの子犬を持ち帰ったことも。その時を振り返り、「子犬が落ち着くように、目覚まし時計を毛布やタオルに包み、その音を母犬の鼓動として聞かせた」と懐かしそうに話す。
病で移動断念 散歩も負担に
7年前、病に倒れた。犬と一緒に全国各地を車で移動する展覧会への出陳は断念。ブリーダー活動は、立子さんの力を借りながら、何とか続けている。「新たな飼い主は、自分が育てた犬を、家の中で飼うなど、かわいがってくれている。そんな姿を見ると、本当にうれしい」と小岩井さん。
だが、寄る年波にはあらがえない。現在、雌の成犬2匹と、雄の子犬1匹がいる。年齢が異なる成犬は、一緒の散歩が難しいため、朝晩計4回の散歩が必要になる。立子さんも体力的に厳しくなってきた。
ブリーダーを続けるために必要な、第一種動物取扱業の更新の期限は今年10月。二人は今、「更新は見送ろうか」と、相談しているという。長年、犬とともに生きてきた小岩井さん。つらい選択をしなければならないかもしれない。