アロマと温かい手

【あおき・みき】52歳。宮田村出身。東京都立医療技術短期大作業療法学科卒。AEAJ(日本アロマ環境協会)認定・インストラクター(2017年)、セラピスト(18年)、ブレンドデザイナー(22年)環境カオリスタ(23年)取得。2018年12月創業。
AROMA YA DANRO
アロマ ヤ ダンロ
松本市筑摩3ー5-11
―けがからの将来像
宮田村で生まれ育ち、学生時代はバスケットボールに打ち込んでいました。中学の時、半月板損傷の大けがをし、初めて理学療法士のお世話になりました。リハビリに丁寧に取り組む姿勢に「こんな仕事があるのか」と、とても感動しました。その強い印象が高校時代には「将来像」へと変化し、東京の短大で学び作業療法士の資格を取得しました。
病院やデイケア施設などで結婚してからも働き、正規雇用・パートなどを含め年ほど勤めました。
―眠りに困った
家庭では3人の子どもに恵まれ、幸せでした。でも、日々目まぐるしい家事の連続。特に同時期に中学生、小学生、保育園児だった時は、さまざまなことが重なったので、家事はとても大変でした。
疲れがたまり、眠りで困った時期がありました。山積みだった一日の家事を終え、深夜ベッドに入っても「あれをやっていなかった、これはどうするんだっけ」と気になって、気づけば朝。かなり疲れていたと思います。
本当に忙しかったので、どこで聞いたのか、見たのかも覚えていませんが、ただ、どこかで「ラベンダーって(疲労に)いいらしい」と知りました。
その時にアロマをやってみようと、寝室に置きました。 まだ何も知らなかったので、専用ウッドやストーンに精油を垂らすのではなく、ティッシュに数滴垂らし、枕元に置いただけだったのですが。
「あれ…」。 数日後、いつの間にかリフレッシュし、眠れるようになっていて驚きました。
自然療法なので効果効能がはっきりしているわけではないのですが、「アロマって体にいいかも」と感じました。大きな感動があり、ちゃんと勉強したくなりました。
日本アロマ環境協会(AEAJ)に2017年会員登録し、インストラクター(同年)、セラピスト(18年)、ブレンドデザイナー(22年)の資格を取得しました。
―暖炉があったから
資格を得て、アロマ体験会などを開いているうちに、店舗も構えたいと思うようになりました。
自宅を店舗にする計画で、店名を考えた時、リビングの暖炉が浮かびました。何となく誰かがいつもいる場所。代わる代わる家族が暖まって次の行動に移ることがとても良いな、と感じていました。
誰でもほっとして元気が出て、にっこりする場でありたいと思い、店名を「AROMA YA DANRO」として18年にオープンしました。
―城町文庫の記事
癒やしを提供したい思いは強かったのですが、経営の視点から見ると、なかなか厳しい状況でした。コロナ禍でさらに難しくなりましたが、癒やしを求める人はいると思って続けました。
そんな時、21年4月のMGプレス1面で、城町文庫が始まった記事を読みました。オーナーの藤木大介さんが「小さな複合店舗を募集している」とあります。ここでアロマを売れる、トリートメントなどをやれるかもしれない―と思い、ダイレクトメールを送りました。
藤木さんから快諾を得て、出店させてもらえました。また、城町文庫でお客さんとコミュニケーションを取ってみたいと思いました。
コロナ禍当時、少なかった県外からの旅行者50人に、「松本の香りのイメージってなんですか?」とアンケートをしました。
30種類の香りをテストしてみると、「ヒノキ」という答えが圧倒的でした。松本に「優しさ」「穏やかさ」のイメージがあることも分かりました。アンケートの傾向を基に自分なりにアロマデザインをしていきました。ヒノキの香りを引き立たせるにはどうするか。優しさや穏やかさを反映させるには―。
精油のブレンドは難しかったのですが、配合率を工夫しました。すがすがしさや清涼感あるベルガモットとパチュリをヒノキと配合し、22年3月に「松本いめーじ」を開発、販売を始めました。
―販路拡大の課題
収益をどう上げるかは、引き続き課題でした。松本商工会議所に24年、相談に行き、いろいろなガイドをしてもらえました。
ホテルのお土産品として販売できるよう販路を拡大してもらったり、事業計画作成に向け創業スクールなどを受けさせてもらったりしました。
スクールでは良い出会いもあり、「企業イメージに合うアロマデザインの発注」なども受けました。少しずつ実績は伸びつつあります。
―手のぬくもり
アロマの世界に入る前に、長く作業療法士として仕事をする中で、「青木さんって手が温かい」と患者さんに喜ばれることがありました。
「手が温かい人は心が冷たい」という迷信がありますが、少しコンプレックスを感じていました。でも、手の温かさは持って生まれた自分の特徴。アロマの施術ではプラスになる。いつか何かの役に立てたら、と思っていました。
また、自分の職歴から来る思いですが、患者さんを支える人たちの役に立ちたいと考えています。家族や医療関係者など支えている人たちの多くは、自分を後回しにして頑張る人が多く、疲れをあまり表に出さない方たちが多い。
そんな方たちを含め、アロマを窓口に多くの人と自分の温かい手がつながれたら、と考えています。
(聞き書き・田中信太郎)

