
松本山雅FCの運営会社が今月、教育機関との新たな共同プロジェクトを相次いで始めた。信州大附属松本中学校(松本市)が、山雅とつながる企業・団体のキーマンを招いて生徒との座談会を開催。商業高校などでつくる県商業教育研究会とは、人材育成を目的とした連携協定を締結した。これまでの地域貢献の蓄積を生かし、クラブが掲げるミッションの一つ、「ひとづくり」にさらに踏み込んでいく。
信大附属中「大座談会」
山雅の声かけで多種多様な講師団
今月16日の信大附属中の体育館は、さながら企業の合同説明会の様相を呈した。壁際に長机15個が一定の間隔で並び、それぞれのブースに企業・団体の代表者が座る。対面の3~5席に、同校の1年生約150人が、入れ代わり立ち代わり着いた。
ただし話題は仕事ではなく、街づくり。生徒が「松本の良さをどう発信すればいいでしょう?」と尋ねると、社会人は「どうすればいいかなあ。そもそも松本の良さって何だろう?」。生徒は「景色とか、水とか…」。
「大座談会」と銘打たれた催しは、本年度の総合学習の一環で企画された。生徒たちはこれまで、環境やSDGs(持続可能な開発目標)などについて学び、理想の街づくりのアイデアを温めてきた。そこにあえて「現実の壁をぶち当てる」のが、この日の趣旨だ。
その壁づくりの中心を担ったのが山雅だ。10年以上同校と関わってきた神田文之取締役(47、前社長)が、スポンサーや個人的なつながりから「ものをはっきり言ってくれる人」に声をかけた。
その結果、多種多様な業界の人が集まった。観光、製造、教育、建設、メディア…。そこに同校が依頼した人や行政(松本市)の担当者、そして山雅の小澤修一社長(46)が加わり、15人の講師団ができた。
同校の藤森祐介教諭(38)は「学びの広さと深さを、ともに実現できないのが私たちの悩み。今回のような場をつくれたのは山雅の協力があってこそ」と話す。
参加した小林愛麗南(まりな)さん(13)は「松本の魅力は人の良さという考えに至って、意外だった。街づくりのヒントに絶対になる」。
講師を務めた、山雅のスポンサーで機械開発・設計のエンジニアリングシステム(同市笹賀)の柳沢真澄社長(60)は「生徒が(街づくりなど)大きな問題を提示してくれ、手の届く範囲をやっている自身を振り返り、忘れていたことを考え直した」と言う。
神田取締役は「地域貢献活動を長年やってきた山雅は、いろんな関係者をつなぐハブ(軸)になれる。今回に限らず強みを生かし、学校に使ってもらう仕組みをつくりたい」と先を見据え、藤森教諭も「今回の催しを一過性にせず、モデルケースとして他校に広がるカリキュラムにできれば」と話した。
商業高との協定 全県に講師派遣
山雅を題材に授業
一方でハブではなく、山雅がメインプレーヤーとしての役割を強めようというのが、県商業教育研究会との連携協定だ。
山雅は2019年から諏訪実業と穂高商業、辰野の各高校に講師を派遣し、山雅を題材に簿記や会計の授業をしてきた。今回の協定で、派遣先を全県レベルに広げ、内容も実践的なマーケティングや地域課題の解決に発展させたいという。
9日に開かれた記者会見で、小澤社長は「生徒が山雅の課題を考え、ビジネスの学びを深められるようにしたい」と話した。