
木を植えて10年目初出品で金賞
今夏の日本ワインコンクールで、塩尻市のワイナリー4社が塩尻産ブドウを使って醸造した6銘柄が、金賞に輝いた。市町村別では全国最多。“最年少ワイナリー”のドメーヌ・コーセイ(片丘)は、ブドウの木を植えて10年目の節目での受賞となった。
会社は若いが、醸造家はベテランだ。大手メルシャンに長年勤めた味村興成(こうせい)さん(67)。自分のワインを造りたいと独立を決めた時、これと見込んだブドウが赤の欧州系品種メルロー、それも塩尻産だった。
条件の合う畑を探して、片丘地区にたどり着いた。塩尻市内とはいえワイン用ブドウ産地としては無名だったが、水はけなど土地柄本位で苗を植えた。2016年春のことだ。
欧州ではブドウの木は10年で一人前といわれるそうだ。だが、「雨の多い日本は7年でいい」と味村さん。実際、今年初めて同コンクール「欧州系品種・赤部門」に出品するのに、植栽から7年目の22年産と翌23年産のブドウを仕込んだ銘柄を選んだ。23年産で金、22年産で銀を受賞し、合わせて4銘柄が銅賞を獲得した。
10年の間には温暖化が著しいが、味村さんは「気にならない。凝縮感のあるワインを造るブドウの生育に夏の暑さは歓迎だ」という。ポイントは夜間の気温が下がること。片丘は標高700メートル前後と、市内でも高めなことが幸いしている。
初め3・5ヘクタールだった栽培面積は、「借りてほしい」という要望も受けて10ヘクタールに増えた。ただ、人家の間に点在している。「(フランスの銘醸地)ボルドーにも家と畑が混在する地域がある」と味村さんは前向きに語るが、開けた農地での栽培に比べ、近隣への気遣いに労力が要るのは事実だ。それでも「地域の人に喜んでもらいたい」と価値を見いだす。
新参ワイナリーの次の10年の課題にブランディングを挙げる。後発産地から「塩尻」「片丘」を発信する挑戦にも拍車がかかる。