
「おいしくて、自分が食べたい」
巨大なトウガラシのような外見の野菜「パレルモ」。パプリカの一種で、国内では知る人も生産量もまだ少ない、珍しい品種だ。見た目とは裏腹に甘みが強く、生でも食べられてフルーツのようだ。
「とにかくおいしい。まずは知ってもらい、食べてほしい」。味にすっかり魅せられて生産に励むのは、塩尻市桟敷の百瀬高志さん(47)。松本市神林のビニールハウスでパプリカを生産しており、約90株のパレルモも栽培している。
赤、黄、オレンジの3色をJA農産物直売所やECサイトで販売する。「一見、手に取りにくい見た目だが、一度食べるとファンになる人が増えてきた」
教師から転身して就農5年目。やみつきになる“おいしさ”の生産と普及に情熱を注いでいる。
認知度を高めて大勢に届けたい
松本市神林にある百瀬高志さんの21棟のビニールハウス。大部分でパプリカを栽培し、一角で「パレルモ」も育てている。背丈より高く育った木に赤、黄、オレンジの細長く大きな実が付いている。
就農してパプリカ栽培を始めた4年前から、少量だがパレルモも栽培してきた。理由は実にシンプルだ。「おいしくて、自分が食べたいから」
群馬県のパプリカ生産者の農場を見学した際に味わい、衝撃を受けた。「甘みが強く、パプリカより皮が薄く、軽い食感で食べやすい。おいしくて感動した」という。「見た目はトウガラシの化け物みたいですよね」と自虐気味に語るものの、「生が一番おいしい。肉詰めで味わってもいい」と、ほれ込んだ作物への愛が止まらない。
味に自信があっても、当初は農産物直売所での売れ行きは鈍かった。やがて県内の料理人に気に入ってもらったり、一度購入した人が繰り返し求めるようになったりした。徐々にファンを獲得し、今年は昨年の約2倍の株数を植え付けた。
今後はさらに認知度を高め、パレルモの未来を育みたい|。そこで百瀬さんは10月、ハウスのビニール張り替え資金の一部を集めるクラウドファンディングを実施。72人から計43万円余の支援があった。パプリカとセットで松本市のふるさと納税返礼品にもなった。
「こんなにおいしいものを知らないなんてもったいない。パレルモの栽培比率を増やして大勢に届けたい」。いちファン、いち生産者の立場で展望を語る。今季のパレルモ、パプリカの出荷は12月中旬ごろまでの見込み。
サッカー指導と農業で毎日充実
手が汚れる土いじりも、虫も苦手だった─。百瀬さんは、大学卒業後に20年近く教師を続けた後、知人の紹介で松本市内の農家と出会い、パプリカの魅力にはまった。「国産は国内流通の2割ほどしかない。徐々に消費が増えつつあるパプリカに可能性を感じた」。生産者の元で2年間研修を受け、神林の農地を借りて2021年に新規就農した。
井戸を掘り地下80メートルから水をくみ上げ、害虫の天敵となる昆虫を入れて農薬を減らす工夫もして、パプリカを年間15トンほど出荷。塩尻市の一部の学校、保育園の給食食材にも使われる。
「果菜なので、半年以上かけて木を育てながら実を取りながら、樹勢を落とさないように栽培するのが面白い。卒業の時にこうなっていてほしいと願い、先を見ながら子どもを育てる教師と似た面がある」
少年時代からサッカーに打ち込み、指導経験も長い。現在は松本国際高校(松本市村井町南3)女子サッカー部の外部コーチ。「昼間は農業、夕方からサッカー指導。このライフスタイルが面白い」と充実感をにじませる。
百瀬さんのパプリカとパレルモは、JA松本ハイランド「新鮮市場ききょう」(塩尻市広丘郷原)、ECサイト「農村日和」で購入可。ききょうでは今月下旬以降、百瀬さんのパプリカやパレルモの詰め放題販売も予定している。詳細は百瀬さんのインスタグラムから。