【農トピックス】#20 猿の追い払い隊

3年目、人と野生を画す活動進化

野生の猿を人里から遠ざける「安曇野市ニホンザル追い払い隊」の活動が3年目に入った。農作物を荒らしたり人の生活を脅かしたりする獣害を減らそうと、ボランティアたちは習熟を重ねている。今年は、熊への警戒策も取っている。
今月中旬、午後の活動に同行した。集合場所の穂高有明の駐車場には、1回の活動定員である6人のボランティアが集まった。
まず、今回入る地域を話し合う。猿の首に付けた発信器から群れのおおよその位置を把握。携帯アンテナを手に現場に向かった。
最後は目視。「いた!」。見つけた隊員の動きは速い。「オーイ、オーイ」と甲高い声で追い立てる。民家の敷地には「サル追い払い隊です。失礼します」と声をかけて入る。裏山に追い込んでも足を止めない。瞬く間に山肌を登っていった。
「猿にとっても味覚の秋。この時期に、里にいてはよくないと思わせることが来年につながる」と山岳ライターの三宅雅也さん(53)。「活動に参加するほど群れの動きの癖が分かる」。副リーダーとして隊の練度を引き上げている。
隊の動きは、道を行き来するくらいだった発足時とは様変わりした。私有地に入るために住民にあらかじめ説明し、嫌がる家には配慮する。隊員たちは山に入れる格好をするのが当たり前になった。
熊鈴や熊よけホイッスルの携帯も発足時にはなかった備え。今年から支給されるようになった。隊員は、随時ホイッスルを鳴らして歩く。
隊は現在56人が登録し、交代で毎日活動している。発足以降、1日の集落滞在時間が24時間からほぼ半減した群れがあるという。「里生まれ、里育ちの猿が山で過ごすようになった」と市耕地林務課の担当者。
農作物被害は比較データが乏しく防止効果は測りがたいが、隊員や市には「猿をめっきり見なくなった」という声が寄せられているという。着実に人と野生の境界を画している。