
女性の視点で不易流行の挑戦
大町市内の三つの酒蔵で最古、江戸末期創業で160年の歴史を持つ市野屋(同市大町)。杜氏として現場を仕切るのが大塚真帆さん(50)だ。伝統製法「生酛(きもと)造り」への情熱と、女性の視点や感性を生かした「不易流行」の酒造りに挑戦している。
メインブランド「RYUSUISEN」は、仕込み水に大町や近隣の名水を、酒米は全量大町産を使用。生酛造りの酸味を生かした低アルコール商品も出した。今季は米を極力削らない(低精白)で仕込んでも飲みやすい酒を商品化するなど、時流と向き合っている。
神奈川県出身。京都大農学部、同大学院修士課程に進み、所属したサークルの飲み会で日本酒のおいしさに目覚め、興味を引かれた。酒造りの道へ進む決意で数々の蔵元を訪ねて熱意を伝え、2000年に京都市伏見区の招德酒造に入社した。
05年、杜氏に就任。酒母造りの工程で自然の乳酸菌を活用する伝統的な生酛造りの酒を蔵の特長にした。プライベートでは2児の母に。仕事と育児の両立に奮闘したが21年、苦渋の決断で退社。その後、好きだった長野県へ家族と移住。松川村で憧れの自宅のセルフビルドを達成した。
22年、経営体制を一新した市野屋から、生酛造りの杜氏として招かれた。「神様からもう一度チャンスをいただいた」。入社時、杜氏は2人だったが昨年から大塚さんが酒造りの全てを統括する。
蔵人を含め従業員の半数は女性で、自身も子育て中。働き手の体の負担軽減からも作業効率や手法を見直し、繁忙期の冬季も土、日曜休み、残業なしの職場に。味に妥協せず、働き方に新しい風を吹かせた。
「水も米も地元にこだわった味を、地域の皆さんに愛着を持って飲んでもらえたら」。
いちのや 1865(慶応元)年創業。2023年、事業承継で現経営体制に。24年に大塚さんが杜氏に就任し、県内で8軒目の女性杜氏蔵に。併せて銘柄を「RYUSUISEN」シリーズに統一(地元酒「金蘭黒部」は継続)し、国内のみならず世界市場を視野に入れた酒造りを目指す。
【沿革】
いちのや 1865(慶応元)年創業。2023年、事業承継で現経営体制に。24年に大塚さんが杜氏に就任し、県内で8軒目の女性杜氏蔵に。併せて銘柄を「RYUSUISEN」シリーズに統一(地元酒「金蘭黒部」は継続)し、国内のみならず世界市場を視野に入れた酒造りを目指す。
【大塚さんおすすめこの1本】
RYUSUISEN 雪華─sekka─無濾過生原酒(720ミリリットル 1980円)
【相性のいい料理】
干し柿のクリームチーズあえ、カズノコ
【連絡先】
市野屋 TEL0261・22・0010