
繊細な自閉タイプのお子さんの中には、公平さ・平等さを重んじ、「人の命も動物や虫の命も同じ重さだ」と感じる方がいます。人間の都合で他の生き物を殺すことが許せず、肉を食べることや害虫駆除に強く反対したり、最近の熊の駆除のニュースを見て「人間の安全のために熊は殺していいなんて動物を差別していて、それは戦争で敵国の人は殺してもいいと思う考えと何が違うのか!」と怒ってしまったりというようなエピソードもよく聞きます。とても優しく豊かな感性の表れですが、これが生きづらさにつながっているお子さんもいます。
例えば、害虫が本当は苦手なのに駆除も許せず、その部屋に二度と入れなくなる、間違えて自分がアリを踏んでしまったことに気づき、1カ月落ち込んで眠れなくなるなど、活動範囲が狭まり、精神的に不調を来すようなこともあります。家の軒先にハチの巣があるのに駆除を許さないと言われると、家族も困ってしまいます。
では、周囲はどう関わればよいのでしょうか。まず、この「感じやすさ」を頭ごなしに否定しないでください。「優しい心だね」と受け止め、本人の価値観を尊重する姿勢を示してください。ただし、過度に神聖視して本人の考えを固定化しすぎるのはお勧めしません。「考え方は人によっていろいろあるね」と結論を統一しようとしない姿勢も必要かもしれません。
日常生活では、害虫の駆除は本人の見えない所で行う、熊のニュースは見せないなど、刺激を避ける工夫が役に立ちます。見聞きすることで不安やこだわりが強まり、つらい状態になることがあるためです。また年齢が上がると、衛生面や安全、法律やコストなど多様な観点から説明すると、少しずつ納得できるようになることもあります。
子どもがこうした主張をすると、ちょっと面倒だなと思うことがあるかもしれません。でもこんな感性を持つ子どもが、大人になって環境保全や動物愛護の活動に関わることもよくあります。命に誠実に向き合い、公平さを大切にできることはとても豊かな力です。それが傷つきやすさにもつながりますが、同時に、人や社会を大切に思う土台にもなり得るのだと思います。