
元警察官の高沼貴人(こうぬまよしと)さん(73、松本市梓川梓)は、ラベンダーを束ねた香りスティックやわら細工など、手工芸品作りを趣味にしている。自己流で作り方を創意工夫し、作り始めたら夢中で作る。仕上がりは「ほんとに高沼さんが作ったの?」といぶかしがられるほどで、そんな反応もうれしいのだ。
ラベンダースティックとの出合いは、警察官時代の交通事故処理がきっかけだった。20年ほど前、松川村のラベンダー畑に車が突っ込んだ。現場を担当した高沼さんは、畑の所有者の女性から声をかけられた。「おまわりさん、ラベンダーを植える所ある?」と。
梓川に植え替えられた株は、きれいな花を咲かせた。「もったいないな」と高沼さんは思ったという。見よう見まねでスティックを作り始めた。
ラベンダースティックは、花を覆うように茎を折り曲げて編んだもの。6~7月、花びらが落ちないうちに刈り取り、茎がしなやかなうちに加工する。
1束に使う茎の本数は、茎の太さに応じて21本から25本。しかし奇数にしないときれいな円筒状にならないと、やっているうちに気付いた。
こぼれた花も詰め込んで「太っちょ」にするのが高沼さん流。糸を使って棒の強度を上げるのがポイントだ。
外見を彩るリボンも自分で選ぶ。爽やかな香りを放つ完成品を手にした人に「奥さん、上手ですね」と言われ、「いや、違うよ」と、自身が作ったことを説明するのがお決まりのパターンで、心の中で「にんまり」している。
「こんなおじさんが作っているとは思わないでしょ。それに、現職の頃の私は怖い存在だったみたいで」と高沼さんは愉快そうだ。
警察官人生では縁のなかった手仕事だが、やってみたら性に合った。手先の器用さは母親譲りかもしれないという。
今の時期に扱うのは、わら。知り合いからもらい、しめ縄や猫つぐらを編む。
しめ縄は初め、子ども向けの講習会に交ぜてもらって習った。今では、地元の神社に飾るのも作り、子どもたちに教える側になった。
猫つぐらは小谷村の北小谷に通って習得した。人に使ってもらううち、「この方が猫は使う」と、覆いのない、鍋状のものを考案した。
今でも厳しい現実と向き合った警察官時代を夢に見るという高沼さん。作り始めると何も考えずに没頭できる手仕事が、かけがえのない趣味になっている。