
認定NPO法人信州まつもと山岳ガイド協会やまたみ(松本市)は、「持続可能な学校登山を目指して」をテーマにトークセッションを松本市立博物館(大手3)で11月に行いました。長野県ならではの学校行事「学校登山」の現状と今後について、教育関係者と山岳関係者らが意見を交わしました。
初めに県山岳総合センター(大町市大町)の傘木靖所長が、明治時代から始まった学校登山の歴史や現状を紹介。県内では中学生が山小屋に泊まって2千メートル級の山に登る取り組みが行われ、2009(平成21)年の実施率は90%以上だったが、年々減って本年度は26%に。コロナ禍後も回復せず、「運動強度が高く危険を伴う」「体力・メンタルなどの理由で参加できない生徒が多い」「天候リスクが大きい」「教職員の負担が重い」などで実施を見送る学校が増えていると伝えました。
一方で、実施校の生徒へのアンケートでは、約95%が「登り切った達成感があった」「仲間と励まし合い、普段話さない人とも話せた」「雄大な景色や高山植物、雷鳥に感動した」といったポジティブな感想が寄せられた。「山小屋での生活を通じて水や電気の大切さを実感した」といった声もあり、環境教育や防災教育としての価値も改めて確認されたと発表しました。
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中学校長と教諭、登山ボランティアらによるパネルディスカッションでは、現場の工夫や悩みが語られました。
体力的に山頂を目指さないグループを別に編成して安全を確保している例や、女子生徒が多いクラスに女性ガイドを派遣してもらい安心感につなげている例。また、現在は「学級数×2+2」と一律に決められている引率教員数について、「実情に合った人数算定を検討してほしい」といった声も上がりました。
県山岳総合センターは本年度から、教員の負担軽減策として県山岳協会員による「学校登山ボランティア」の派遣を始めました。ボランティアとして参加した小西柚貴子さんは「生徒たちが元気いっぱいに登山を楽しみ、自主的に『ここ浮き石あるよ』と声をかけ合う姿に成長を感じた。自然体験を通じて郷土愛や地元とのつながりが育まれていると実感した」と発表。
やまたみ事務局長の福田浩道さんは、「学校登山が『つらかった』記憶として残ってしまいがちなのは残念。『楽しかった』思い出に変えたい」と言い、そのために事前の出前授業で歩き方の基本や山の植生・生き物・気象などを伝え、保護者向け説明会で装備や安全対策を丁寧に説明する。「ただ登る」だけでなく、多くの発見がある学びの場にする工夫を続けているとし、「楽しい記憶を持った子どもたちが、大人になってまた信州の山に戻ってきてほしい」と期待を寄せました。
他に一度途絶えたが、総合的な学習の時間の選択科目に登山コースを設け、山や自然について調べる学習とセットにしたことで「学びの延長としての学校登山」という新しいスタイルで復活させた事例発表もありました。
今後に向け、▽全員一律の登頂にこだわらず、ルートや強度を分けて多くの生徒が参加できる形にする▽教員向けの登山研修を充実させ、不安を軽減する▽登山ガイドやボランティアなど地域と連携した体制づくりを進める─などの提言もありました。