
ショパンのピアノソロ作品全211曲を、参加者全員で演奏しようという「みんなdeショパンマラソン」。松本ピアノ協会の主催で2015年にスタートし、10回目の今年、全曲演奏を達成した。
レベルも年齢も問わず、コンクールでもコンサートでもない。共通するのは「ショパンが好き」という思いだけの、独創的なイベント。毎年参加者は定員を超え、多くの人に愛されてきた。
松本の催しを全国に広げようと10月、同協会は一般社団法人に衣替え。来年は北海道でも開催する。今後は、複数会場で同時開催することなども視野に入れ、資金集めのクラウドファンディングも始めた。代表理事の猿田泰寛さん(49、同市蟻ケ崎5)は「いろいろな人がホールでピアノを演奏する機会をプレゼントしたい」とする。
「全国のホールで開きたい」
「みんなdeショパンマラソン」が始まったのは2015年、松本市水汲のキッセイ文化ホール(県松本文化会館)。最初の1曲は「ワルツイ短調WN63」だった。
以来年1回、同じ会場で開催を続けて今年、10年がかりで211曲を“奏破”した。最後を飾ったのは、ピアニストの小山実稚恵さんが演奏した「マズルカ第29番嬰ハ短調op.41─4」だった。
10回で7~83歳の延べ744人が、県内を中心に23都道府県から訪れ、延べ906曲を弾いた。当然曲が重なり、「ワルツ第6番『子犬のワルツ』」「ノクターン第2番」「プレリュード第15番『雨だれ』」が人気だった。
一人は無理でも集団で挑戦
「みんなde|」は、松本ピアノ協会代表理事の猿田泰寛さんが発案した。きっかけはピアニストの横山幸雄さん(東京都)が11年、ショパンの独奏全曲を18時間ほどかけて暗譜で弾き、自身の持つギネスブックの世界記録を塗り替え、「24時間でもっとも多い曲を1人で弾いたアーティスト」に認定されたことだ。
とてもまねはできない。だが、「アマチュアが集団で挑戦したらできるのではないか」。15年、キッセイ文化ホールとタイアップし、松本ピアノフェスティバルの催しの一つとしてスタート。その後、独立したイベントとなり続いてきた。
猿田さんは松本深志高校を卒業後、東京芸術大ピアノ科へ進学。ウィーン国立音楽大留学を経て、東京で演奏家・指導者として活躍し、15年ほど前に郷里にUターンした。
演奏家同士が集まる機会をつくりたいと、松本ピアノ協会を設立。「みんなde|」を全国のホールで開き、より大きなイベントにしたいと10月、一般社団法人にした。現在はピアニストや指導者を中心に、約30人がメンバーという。
ショパンは「ピアノの詩人」といわれ、協奏曲なども含めてピアノを使った音楽ばかりを作った。猿田さんは「こよなくピアノを愛していることが伝わる。小さい曲や大きな曲、簡単な曲や難しい曲と、バランスがいい」と魅力を語る。「みんなde|」が、全国から人が集まる人気イベントとして定着した理由でもあるという。
全曲演奏を達成し、来年から2巡目の「エピソードⅡ」に突入する。「全国に広げれば、もっと人が集まるのでは」。資金を集めるのと同時に、多くの人に催しを知ってほしいと、クラウドファンディング(CF)を行うことにした。50万円を目標にしている(26年1月31日まで)。
「コンクールでも発表会でもないユニークな企画を、全国のホールで開きたい」というのが、猿田さんの夢だ。プロ、アマ関係なく、素晴らしいステージで演奏できれば、ピアノを愛する人の励みにも目標にもなる。「集まって楽しみ、ワクワクできる場所にしたい」
26年は4月29日にキッセイ文化ホールと、5月17日に北海道岩見沢市のまなみーる市民会館で開催する。CFの詳細はウェブサイトから。