
松本市などに工房を構える家具ブランド「atelierm4」が、北欧家具の本場デンマークなどの「家具職人の卵」たちの注目を集めている。
自国の技術専門校などに通う若者たちは、和がんな、のみなどの日本独自の技術に引かれ、インターンシップ(就業体験)制度を使って来日。数カ月間、同工房に寝泊まりして学ぶ。若者の受け入れをPRをしているわけではないが、SNSなどを通じこの工房を選んでくるという。
世界的に知られる北欧家具。日本の職人が影響を受け、憧れもした。その「逆転現象」が起きている。m4代表の前田大作さん(49)は「自分も意識している国の若者が、日本の技術に興味を持ってくれるとは」。喜ぶと同時に驚いている。
互いの成長のためインターンシップ受け入れ
9月1日から11月30日の3カ月間、松本市入山辺のatelierm4の工房で学んだのは、デンマーク・コペンハーゲンにある、1843年設立という技術専門学校に通うバートラム・エセルバーグさん(24)とカーラ・ジョー・ウィッツェルさん(23)だ。
二人は学校で木工を学んでいる。主な内容は「工業化」された家具造りに対応するための機械操作の仕方や技術などだ。
デンマークは北欧家具の本場の一つで、多くのブランドがあり、著名なデザイナーも輩出。材質を重視し、伝統的な職人技を駆使しながら、一般の人にも手が届く家具を製造、世界的な人気を得た。しかし、「黄金期」は1940年代から60年代までに限られる。
その黄金期をほうふつさせる日本のかんなやのみ、のこぎりなど「ハンドツール」を使った手仕事「ハンドメード」に興味を持ち、はるばる海を渡ってきたという。
まず、二人が取り組んだのはかんなの刃を調節する「仕込み」。かんなの本体を木づちでたたいて刃を出したり、引っ込めたり。微妙な刃の出方を目視で確認する作業だ。
デンマークにもかんなと同じ役目の道具はあるが、和がんなとは逆に押して木を削る。「紙やすりなどでなく、かんなで削って木の表面を仕上げるのが日本の木工の基本中の基本」と前田さん。
二人は自身が「仕込み」をしたかんなで削ったが、直線的に「すっ」と、引くことができずに四苦八苦した。
エセルバーグさんは「かんなの刃を研ぐのが難しい。少しずつ上達したい」。ウィッツェルさんは「同じ動きを繰り返す仕事の仕方に驚いた」と、日本の仕事場での感想を語った。
インターンシップ期間の終盤には、日本で購入した「マイかんな」で、カッティングボードを仕上げられるまで上達。前田さんはその出来栄えに合格点を与え、「この滑らかな手触りと木目の美しさを出す技術をデンマークでも伝えてほしい」と期待した。
「日本の手仕事」認められた喜び
昨年5月、デンマークの木工職人からSNSを通じて「学ばせてほしい」という申し出が突然舞い込んだ。当初は、言葉や受け入れ態勢などに戸惑ったというが、お互いの成長のためにと、同8~10月の3カ月間、受け入れた。これをきっかけに今年の3~5月、技術専門校に通う2人のデンマーク人を受け入れ、今回の2人と合わせ、これまでに5人が前田さんの下で学んだ。
今後も、デンマークの専門学校に通うスロバキア人を来年4月から受け入れる予定がある。英国、イタリアからも問い合わせがきているという。
前田さんは「日本の手仕事の価値が、デザイン先進国で認められているのはうれしい」。その上で「どちらがいい、悪いじゃなく、互いの技術をどうミックスしていくかが、自分にとっても課題。成長するための鍵になる」と見据えている。