【講演会聞きどころ】パティシエ/おいしい信州ふ~ど大使・鎧塚俊彦さん

周り気にせず「好き」に全力を

松本市内のホテルで行われた松本調理師製菓師専門学校(白板2)創立50周年記念式典で、県産食材を発信する県の「おいしい信州ふーど」大使でパティシエの鎧塚俊彦さんが「菓子屋は世界一幸せな仕事」と題して講演した。学生や関係企業など約260人が聞いた。(12月1日)
僕には才能がない。謙遜ではなく、子どもの頃から不器用でセンスもなかった。この業界に入ったばかりの頃も、「才能がないし辞めた方がいい」「菓子屋に向いてない」と散々言われた。でも、そこでどうしたらいいかと考えた。
8年間ヨーロッパの三つ星レストランなどで修業を積み、2004年にカウンターデザートの店「Toshi  Yoroizuka」を東京・恵比寿に開いた。周囲から「客単価の低さ、回転率の悪さでつぶれるに決まってる」と言われたが、やめようとは思わなかった。やってみて無理だったら考えればいいと思った。技術がないからこそ考えた、サクサクのパイと水分の多いスイカを組み合わせた「スイカのミルフィーユ」は好評で、連日大行列になった。
自分で育てたカカオでショコラを作ろうと、10年にエクアドルに自社農園を開いた。11年には「一夜城ヨロイヅカ・ファーム」(神奈川県小田原市)に畑を作り、果物や野菜を育てている。
何万人もいるパティシエの中で、みんなをぎゃふんと言わせるようなものを作っている人はどれだけいるのか―。自分は努力してきたつもり。それでも世の中にはすごい人がたくさんいる。どうしたらお客さまに喜んでいただけるのか―と考えた結果、「畑をやるしかない」と思った。
人が生きていく上で菓子屋は必ずしも必要ではないが、そこに命をかけている。約35年続けた中で感じたのは、お客さまは幸せを求めてやって来るということ。結婚式、誕生日…テーブルにケーキがあるだけで幸せがある。菓子屋は人の幸せを常に演出する仕事。良い職業だと常々感じている。
ここにいる学生が活躍するのは15年後くらいだと思う。それまでは人まねでもいいから、どんどんインプットしてほしい。その間に時代は全く違う流れになっているはずだ。そして師匠と同じことをやっては駄目。アウトプットする際に、自分の個性をどうやって生かすのかを考えることが大切だ。好きなことにとことんチャレンジしていってほしい。