
大桑村出身の日本中央競馬会(JRA)の騎手・藤懸貴志さん(32、滋賀県)。今年、デビュー16年目を迎える中堅は、「勝利至上主義」の厳しい世界を生き続けている。藤懸さんの仕事場で、競走馬の育成などをするJRAの施設・栗東トレーニング・センター(同県栗東市)を昨年11月下旬に訪ね、あまり知られていない騎手の一日に密着。これまでの騎手人生についても聞いた。
平日は早朝から調教、週末は開催競馬場へ
午前5時20分 起床し自家用車で栗東トレセンに向かう。
同40分 トレセン内の調整ルームに到着。私服から調教用の服に着替え、10分ほどストレッチを行う。
同55分 栗東トレセンの正門に当たる凱門で記者と落ち合う。「転がす音に馬が驚く」という理由で、記者が持っていたキャリーバッグを施設内で使うのはNG。正門で預かってもらう。
6時10分 藤懸騎手の案内で記者は、騎手や調教師、競馬記者などが集まる「調教スタンド」に到着。空が白み始め、徐々に馬が馬房から出てくる。
同15分 藤懸騎手が1頭目の調教騎乗を行う。
7時20分 2頭目の調教騎乗。この馬は翌日、「追い切り」という強めの調教が予定されていたため、軽めの調教。
8時 3頭目の調教騎乗。
同50分 4頭目の調教騎乗。この馬は11月30日に京都競馬場の第4レースで藤懸騎手が騎乗したの「ケイアイマウンガ」。
10時 この日最後の5頭目の調教騎乗。1日にこれだけの頭数の調教をするのは「多い方」。基本的に藤懸騎手は調教依頼を断らないという。
同40分 競馬で騎乗予定の馬の調教やレースの打ち合わせをするため、2、3の厩舎を回る。
11時20分 調整ルームに戻り木馬を使ったトレーニングなどを行い、その後入浴。
午後0時30分 帰宅。朝昼兼用の食事(1日2食)。その後は昼寝をしたり子どもと遊んだりしてリラックス。
以上が火~金曜日午前中までのスケジュールだ。金曜日は、午後9時までに土曜日に騎乗する競馬場の調整ルームに移動。日曜日は前日と同じ競馬場か別の競馬場に移動。月曜日は完全休養日。

デビュー16年目「馬主の信頼得て選ばれる騎手に」
今年でデビュー16年目。一つでも多く「勝ちたい」と思ってやってきたので、現在の成績は最初の目標とはかけ離れている。この世界は結果(勝利)が全て。2023年にキャリアハイの23勝でき、やってきたことが間違いでなかったと思えた半面、その後2年は成績を落としている。
なぜなのか。技術は上がっているのに勝てない。騎手の目で見て、圧倒的な技術があっても勝てない騎手もいる。この答えが分かることはないと思う。とにかく馬主の信頼を得て、選ばれる騎手になるしかない。
人気の低い馬を連に絡ませ(馬券の対象になる着順に入ること)たり、賞金圏内(原則5着以内)に持っていったりしたときの、馬に関わった人たちの喜びようが、一番のやりがいだ。将来、調教師になるのは大きな夢だ。(談)
ふじかけ・たかし
1993年、大桑村出身。大桑中卒業後、日本中央競馬会競馬学校(千葉県白井市)に27期生として入学。2011年騎手デビュー。通算155勝(昨年11月30日現在)、重賞1勝(21年、GⅢ・マーメイドステークスでシャムロックヒル騎乗)