今春真打ちに昇進し名跡「二代目華形家八百八」を襲名 大町出身・柳家圭花さん

大町市出身の落語家、柳家圭花さん(44)が今春、真打ちに昇進する。親族の反対を押し切ってサラリーマンから転身して15年、昇進とともに華形家八百八の名跡を七十数年ぶりに襲名。「珍しいはなしを高座にかけていきたい」と抱負を話す。

「真打ち空白地帯」の中信埋める昇進

長野県の中でも中信地方は、長く「真打ち空白地帯」だ。圭花さんも地元にいた頃は「落語の『ら』の字も知らなかった」という。打ち込んだのはサッカー。松本県ケ丘高校のFWとして全国高校総体にも出場した。
落語に出合ったのは20代半ば。東京で食品添加物を扱う研究職をしていた。休日、通勤定期を使って上野駅で降り、何となく寄席に入った。「なんか面白い、客席も居心地いいな、と」。月に何度も通うようになった。
やがて、一人のしゃべりだけで自分も含めた数百人が笑う姿に憧れが芽生えた。「客席から高座がちょっとかっこよく映った」
中でも輝いていたのが現師匠の柳家花緑さん。芸に華があった。一方で、気軽に客席に降りて写真撮影に応じるサービス精神もあった。「僕にまったくないことで、欲しいと思った」
だが落語家になる人生はそれまで全く想像していなかった。両親も親戚も大反対。踏ん切れないまま、ある時期は「迷う自分が嫌すぎた」という。

きっかけは、2011年、東日本大震災直後の母の電話だった。「やりたいことをやりなさい」。29歳で転身した。
入ってみた落語界には「がくぜんとした」という。しゃべりはもちろん、見習いや前座の修業も厳しかった。ずいぶん怒られ、謝った。それでも、落語家はかっこいいという思いは変わらなかったという。
16年に二つ目昇進。19年からは大町で独演会を始めた。両親が運営を手伝う会は、これまで25回を数える。「みんな素直に笑ってくださる。僕のホーム中のホーム」。いろんな話を聞いてもらおうと、これまで同じネタを2度かけたことはない。

昨春、真打ち昇進が決まった。華形家八百八の名は、存在を知ってから「音の調子が良くて、田舎っぽさもある」と気に入っていた。仲間から「お前に合っている」とも言われ、師匠に襲名を請うた。
入門後に江戸弁を習うにつけ、「自分は長野県出身の田舎者」と思った。そんな自覚を持ちつつ、目指すのは「人物になりきる」境地だ。
なじみのない演目でもしっかり聞かせ、かつての自分のように、「いい時間だったな、と感情のお土産を持って帰ってもらいたい」。


やなぎや・けいか

本名・北村圭大。1981年生まれ。明治大卒。今年3~4月、東京で2代目華形家八百八の真打ち昇進襲名披露興行。6月20日に松本市のキッセイ文化ホール(県松本文化会館)でも行う。

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