感性で“共創”―安曇野で写真×掛け軸の夫婦二人展

ドイツ・ベルリンから一昨年松本市に移住した、写真家の四方花林(しかたかりん)さん(35)と、「掛け軸アーティスト」の上野亮さん(36)の夫婦が、安曇野市穂高のアートギャラリーレストラン「TOO(トゥー)」で移住後初の二人展を開いている。「湖の光と空 ベルリンでみた景色」と題し、自然の表情を独自の表現で切り取る四方さんの写真のイメージに合わせ、上野さんが表装にデザインして展示。掛け軸作品7点のほか、額装した写真やポスターも展示、販売している。2月1日まで。
作品の一つ「PUKU PUKU(プクプク)」は、四方さんがベルリンの湖で撮った水面の写真を縦126㌢、横65㌢ほどのサテン地にプリント。その上に、同じ構図の写真の和紙印刷を重ねた。最下部の「軸先」もアクリル製で透明感を意識したという。
「ラトビアの空」は夕暮れのオレンジ色に染まった雲が印象的な作品。掛け軸も、光によって表情が変わる、ほのかな光沢のある生地を使用。写真の周囲には京都・東寺の弘法市で出合った布を使い、夕暮れの静かな空気感を表現した。四方さんの写真の世界観が、上野さんの掛け軸でさらに引き立ち、輝きを増す。

新しい表現法を模索し、互いの感性を掛け合わせながら〝共創〟する二人。経歴や出会いもユニークだ。
神戸市出身の四方さんは、宝塚音楽学校を経て、宝塚歌劇団で活躍。趣味だった写真を追求したいと、2012年に退団した。下諏訪町出身で、東京でモデルをしていた上野さんのインスタグラムを見て「写真を撮らせて」と連絡したのが15年。ほどなく交際が始まった。
四方さんは16年にワーキングホリデーで訪れたベルリンを気に入り、上野さんも渡航して19年に結婚。上野さんはかつてカフェに勤めていた経験から、レシピ本製作やレストランなどのメニューを作成するフードスタイリストに。作った料理を四方さんが撮るようになり、夫婦での共創がスタートした。
掛け軸というツールは21年、写真の展示方法を模索していた四方さんが、手先が器用な上野さんに提案。上野さんは日本的な魅力に引かれるとともに、「固定観念にとらわれず、可能性があった。妻の作風も和紙印刷にぴったりで、合うと思った」と独学で習得。額装の写真より、巻いて持ち歩きやすく、大きい作品も展示しやすいという利点もあった。
子育てしやすい環境を求め、松本に移り住んで1年余り。四方さんはバレエや音楽家の撮影、舞台向けの映像制作などを手がけ、上野さんは、他の作家とコラボして信州紬(つむぎ)の生地で仕立てるなど、それぞれが世界を広げてきた。
掛け軸は「(他の人の)作品に別の価値を生むことができる」と上野さん。四方さんも「松本は古いものを残しつつ新しいことをしていて、全部が好きな感じ。ぜひ古い蔵で展示をしてみたい」。松本エリアの自然やモチーフを撮りためており、新たな夫婦の共創が見られるのも遠くなさそうだ。

【湖の光と空 ベルリンでみた景色】 2月1日まで、安曇野市穂高のアートギャラリーレストラン「TOO」。午前11時~午後10時(観覧時に飲食が必要)、水・木曜定休。詳細は二人のインスタグラム(@karinkamera、@ueno_ryo)で。