
安曇野市堀金三田のフリースクール「LIGHTHOUSE SCHOOL(ライトハウススクール、旧ひかりの学校)」は、オープンから11年目を迎えました。公立学校の教員として特別支援教育に携わった経験を基に、「子どもが伸び伸びと学び、安心して人と関われる場所をつくりたい」と立ち上げた高林賢さん(50)に話を聞きました。]
★中心は「関係性」
スクールの教育の中心にあるのは、学力や進度ではなく「関係性」です。私は「リレーションシップ教育」と名付け、まずは大人と子ども、そして子ども同士の信頼関係をつくることを何より大切にしています。音楽、外遊び、野外活動、算数や国語など、すべては関係を育てるための〝教材の一つ〟。その年、その時に集う子どもたちのカラーに合わせ、活動内容は大きく変わります。
音楽は自分が大好きなこともあり自然と力が入ります。ギターやドラムセットなども置いています。低学年のうちはとにかく遊びたいので、ダンスや表現活動を取り入れる年もあります。今はコミュニケーションが苦手な子も多い。学校が嫌だという子に理由を聞くと「宿題があるから」と答える子がほとんどですが、宿題がなくても行きたくない。ストレスを取り除くだけでは元気にならないです。
不登校支援では、苦手なことや刺激を避ける配慮が重ねられますが、すべてに対応しても、学校に行くためのエネルギーが空っぽだと前に進めません。必要なのは、喜びや情熱、そして人と関わる中で得られる手応え。ここにも感情の爆発や強い不安を抱えて来る子どももいますが、半年、1年と時間をかける中で、少しずつ落ち着き、自分の思いを言葉にできるようになります。
★与えることで喜びを感じる
私の考えの背景には、教員時代にフィンランドやオランダ、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーランドなど教育先進国の事例を学んだ影響があります。競争や管理を最小限に抑え、子どもの主体性や自治を尊重する教育。フィンランドでは授業時間が短く、教師も早く帰宅するにもかかわらず、学力水準は世界トップクラス。詰め込まなくても子どもは育つ。その事実に衝撃を受けました。
人は、与えることで初めて喜びを感じます。あいさつをする、順番を譲る、相手の話を聞く…。日常の小さな関わりを通して、子どもたちは〝もらう側〟から〝与える側〟へと一歩ずつ移っていきます。安心できる関係の中で、「寂しかった」「声をかけてほしかった」と自分の気持ちを整理し、学校に戻る選択をする子もいます。
スクールでは、学校復帰を目標にはしていません。掲げるゴールは「社会自立」。就職だけでなく、家庭を築くことや地域で生きることまで含めた広い意味での自立です。
学習は午前のみで、それぞれが異なる課題に取り組み、分からないところをその都度聞くスタイルです。時間割で縛らず、本人の意欲を尊重します。
★これから
これから10年は、次の世代を育てたいです。音楽、農業、ものづくりなど、子どもが興味を深められるコース、学習に特化したコースの構想もあります。でも、あくまで受験のためではなく、生きるための学びです。
競争や管理が強まる社会の中で、子どもも大人も疲れている。社会が一気に変わらなくても、一人一人が変わればいいと思います。
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同スクールは学習に使うタブレットの修理交換費に充てる寄付を募っている。詳細はウェブサイトから。