「全国で活躍する選手を塩尻で」移住した久保田聡さん 小学生のランニングクラブ開く

グラウンド外周を走る子どもたち。時間とともに少しずつ足が上がるようになり、少しずつ速くなってくる。目指すはマラソン大会のヒーローだ。
塩尻北部公園(塩尻市広丘原新田)が拠点の「IDM(アイデム)ランニングクラブ」。作夏(2025年)に発足し小学1~5年生の10人が週に数回、練習に励む。
小学生対象の中長距離専門クラブは珍しいという。代表・コーチでランニングインストラクターの久保田聡さん(36、同市大門七区)は、「全国で活躍する選手を塩尻で育てたい」と昨年、千葉県から移住した。
小学校から大学まで陸上競技に取り組み、全国大会にも出場。一方、けがや東日本大震災など困難にも向き合った。久保田さんがクラブに込めた願いとは―。

「練習できることに感謝を」

中長距離専門の「IDMランニングクラブ」には、基礎と育成の2コースがある。1月24日の基礎コースには小学1~4年生の3人が参加。1周約400㍍のコースを2周後、速く走れる体づくりの運動や筋トレをした。
鳥村維史さん(10、松本市寿北)は「走るのが好きで練習も楽しい」と息を弾ませる。当初1㌔5分台だった記録を1分短縮し、現在は小学生トップレベルの3分台が目標だ。家でも自主トレーニングに励み、「クラブに入ってから知識も付いて目標を持ち、生活のモチベーション(目的、やる気)にもなっている」と母の智美さんは見守る。
久保田聡さんは青森県出身。小学生から陸上競技を始め、中学時代は全国大会へ。陸上強豪校への進学を目指したが、中学3年時に足首を骨折し断念。別の高校の陸上部で活動した。
陸上の指導者になりたい―と、仙台大(宮城県)体育学部に進学。3年生の時、東日本大震災に遭った。ライフラインが止まり、避難所を転々とした。窮地に立った人のさまざまな行動や同級生の死などに遭遇した。
卒業後は千葉県のスポーツジムに就職。そこでインストラクターの百瀬圭さん(37、塩尻市広丘野村)と出会った。百瀬さんは2021年に起業し、塩尻市にトランポリン教室「TORA JAM」を開いた。
百瀬さんの知識や考え方に感銘を受けていた久保田さんは、陸上長距離の強豪県、長野への移住を計画。昨年4月から塩尻市に住み、8月にクラブを発足させた。
チーム名「IDM」は「生きてるだけで丸儲け」の頭文字を取った。お笑いタレントの明石家さんまさんの座右の銘で、日航機墜落事故(1985年)で自身が搭乗予定だった便を避けて九死に一生を得たことから生まれた。
骨折で挫折を味わい、災害も経験した久保田さん。「速く走ることだけでなく、当たり前に生活や練習ができることへの感謝を、子どもたちに伝えたい」
子どもたちも成長している。昨秋に参加した「信州須坂ランニングフェス」では、メンバー2人が各参加部門で優勝、「松本クロスカントリー大会」(12月)でも入賞者が出た。今月15日には、走力向上や練習の成果発表を目指し、信州スカイパーク補助競技場(松本市今井)で1㌔タイム測定会を開く。
現在久保田さんは週2回、「TORA JAM」でアシスタントを務め、百瀬さんからクラブ運営や指導方法などの助言を受ける。百瀬さんは「いずれは指導者としてライバル同士になり、中信地区の運動を盛り上げたい」と話す。
「IDM」を中学部活動の地域移行の受け皿にもしたいという。「レースは1人でも、練習には仲間がいる。走ることを楽しみ、助け合い、励まし合って上を目指したい」と久保田さん。
練習日は火、金、土曜の午後。見学可能。15日の測定会は一般参加もできる。問い合わせは久保田さんTEL080・5578・8992