【農トピックス】#23 下水汚泥肥料

頼もしい〝研究者の卵たち〟に期待

下水汚泥を肥料として活用することを目指す、南安曇農業高校と県犀川安曇野流域下水道事務所との協働検証が3シーズン目を終えた。作物栽培での肥効は順調に実証される一方で、田畑での本格実用までの壁はなお厚い。研究チームは入れ替わっても、生徒たちの粘り強い取り組みは続く。
2月17日、同事務所で協働事業の本年度報告会が開かれた。
同事務所の処理場から出る下水汚泥は2024年に「アクアピア1号」として肥料登録。生徒たちは、南農の試験農場で水稲のコシヒカリや風さやか、小麦などを栽培した結果を紹介し、実際に肥料として利用できると解説した。
一方で、実用化の障害にも触れた。アクアピア1号は下水汚泥の堆肥化処理をしておらず、環境法制上は廃棄物となり、通常、田畑にまくと不法投棄とされる可能性がある。
解決を目指す生徒たちは本年度、目を農場の外にも向けた。実用化している北海道の例を見つけて、当事者にヒアリングまでした。
それでも先の見通しはつかない。同事務所の担当課長は、社会の理解や地域の受け入れの進み具合を考慮し、「5年、10年のスパンは必要」と語った。
高校生には長過ぎると思いきや、本人たちはへこたれない。3年の伊藤瑞希さんは「下水汚泥にはまった。大学に入ってからも研究し続ければ、ちょうど実用化の時に役に立つかも」と話す。
後輩もいる。2年の山崎美優さんは中学3年時に南農の卒業研究発表会で汚泥肥料を知り、「やりがいを感じた」という。研究の引き継ぎに向け、報告会の会場でも出席農家に聞き取り調査をした。「私の代でも実用化にはならないかもしれないが、研究は続いてほしい」
下水汚泥肥料で特に期待されるリンは、原料を輸入に依存している。当面は安定供給が見通せるが、地政学的リスクは無視できない。研究者の卵たちが長期的な視線とぶれない志をつないでいることが頼もしい。