
固定ファンからインバウンドまで
書店の興文堂平田店(松本市平田東2)と平安堂あづみ野店(安曇野市豊科南穂高)が中古レコードの販売コーナーを設けている。書籍とレコード盤というアナログ文化の組み合わせが、さまざまな客を書店に呼び込んでいる。
「いいものがあるね。価格も良心的」。興文堂の売り場でうなずいたのは、塩尻市立図書館の元館長、中野実佐雄さん(67、同市)。自宅には、1970、80年代の邦楽を中心に1千枚ほどがあるという。
愛好家の仲間と随時、一般向けの試聴イベントも催す。「レコードは音もいいが、ジャケットもいい。特に昔のものは質感に味わいがある」。CDは小さいし、配信音源はなおさら味気ない。
今回、なじみの書店でレコードが売られると知って楽しみにしていたという。「求めているものに出合う機会が増えるのはいい」。店内を見渡し、「本とレコードは別々の店で買うものだったが、一緒に並んでも違和感ないね」と納得顔だった。
興文堂の奈良井功社長(65)は、以前から得意客との雑談や専門誌の販売状況からレコードに根強い需要があるとは感じていたという。昨年、取次大手トーハンのあっせんする集客イベントの項目に中古レコード販売が登場、開催を決めた。
反応は予想を超えた。「2月の開始からじわじわと売れ続け、たまに5、6枚まとめ買いする人がいる。年配者だけでなく若者も来て、一枚一枚ゆっくり見て、趣味のものに出合う楽しみを味わっている」。そんな様子に好感が持てることもあり、次回も検討するという。

すでに定期イベントになっているのは平安堂あづみ野店。レコードとCDの中古品販売を8年前から続けている。夏と冬の半年ごとだったが、販売戦略事情で今回は1年ぶりの開催となった。それもあってか、販売ペースはいつも以上。「商品ワゴンの隙間が目立つときもあった」と同店の井口遼さん(28)。
購買層には変化を感じるという。「数年前はレコードブームが言われ、若い人が多かったが、落ち着いてきてコアなファンが残った」と井口さん。一方で、外国人の割合が増えた。「SNSの発信を見て、観光のついでに来るんだと思う」
中古レコード・CD販売は、催事スペースのイベントでは随一の売り上げという。春休みは、また一段と多くの来客を見込む。
書店との相性の良さを、レコード業者側も期待する。今回、興文堂にレコードを出したMION(横浜市)は、国内外の数百万点規模のレコード在庫を管理。昨年から、ネットから実店舗に販売を広げており、書店は有力な提携先だ。事業開発担当の小川竣也さん(26)は「デジタルではなく現物を手に取ってもらう機会を増やしたい」と話す。
◇
イベントは、興文堂平田店((TEL0263・58・0323)が3月末まで、平安堂あづみ野店(TEL0263・72・8877)が3月22日まで。