「美しの塔」を抱いて昇る太陽(美ケ原高原)

「美しの塔」を抱いて昇る壮麗な日の出。流れる筋状の薄雲がかかり、味わい深い風情を描き出した=ニコンD5、ニコンED AF-S ニッコール1200ミリ、ND400(減光フィルター)

希望の日の出に一抹の不安

美ケ原高原のシンボル「美しの塔」をシルエットに抱いて昇る冬の日の出は、荘厳の極みだ。未来への希望を感じさせるこの光景の撮影を続けて21年になるが、実は気がかりなことがある。
昨年12月2日午前6時半。神秘的な光景を捉えようと1200ミリの超望遠レンズを構えて待った。
6時46分。草原の縁を朱色から黄金色に染めながら真っ赤な日が昇り始めた。大地から力強く湧き昇り躍動する火の玉が「美しの塔」を3分48秒ほどで通過した。
気がかりとは黒点だ。最近、撮影する太陽にほとんど黒点が見当たらない。太陽活動は11年周期で変動し、黒点が増えていく。しかし、その周期は乱れ、国立天文台(東京都三鷹市)や情報通信研究機構(本部・東京)の「宇宙天気予報センター」などによると、黒点のない日が連日記録される「極めて静穏」な状態が続いている。
江戸時代、黒点のほとんどない時期が続くマウンダー極小期(1645~1715年)があった。このまま太陽活動が低下すると、この時同様に地球が冷える「地球寒冷化説」が研究者らの間で急浮上している。その一方、「地球温暖化説」も懸念されている。
いずれにせよ、厳しい環境に陥ることが心配される地球。昇った太陽に手を合わせ、人類の永久の幸せと無事を祈った。
(丸山祥司)