[創商見聞] No.43 傳刀明子 (monfavori)

―昨年、事業承継で店を引き継いだ
 当社は2001年に創業し、私も創業当時からのスタッフでした。それまでの代表が高齢になり、事業を承継したいという話が出たときは「いよいよか」という感じでしたね。もちろん、責任者になることの重圧はありましたが、生活雑貨を扱う仕事は大好きだったので「やるしかない」と腹をくくりました。
 会社としても変革の時期でした。創業直後からフランチャイズの雑貨店に加盟して長年やってきましたが、18年にフランチャイズを脱退。新しく「モンファヴォリ」としてスタートしました。ただ、以前の店の名前がとても浸透していたので「あれ、あの店なくなっちゃったんだ」って、帰ってしまわれるお客さまもいて。店名が変わることは大変なことなんだと実感しました。
―商工会議所の支援は
  商工会議所がやっている「まちゼミ」に参加させてもらうなど、以前から関わりがありました。今回、会計事務所から「事業承継の補助金がある。ただし、期間限定なので申請するならいい機会だから商工会議所に相談してみては」と教えてもらい、早速、担当の方にお願いしました。
 おかげさまで採択していただきましたが、補助金は、申請するときも、また補助事業の報告提出書類など大変。支援がなければできませんでしたね。
―新しいサービスも始めた
 事業承継補助金は、ただ事業を引き継ぐだけではなく、新しい人が新しいことにチャレンジしていくという、前向きな事業承継であることが求められます。商品を売っているだけでは駄目。
 昔、都会でタオルなどに名入れ刺しゅうをしているのを見たことがあって、頭の片隅にずっとあったんですね。調べてみると、今はミシンが進化して、小さな子どもさんが描いたお絵描きをそのまま刺しゅうにすることができると知って、「これだ」と思いました。有料ですが、タオルやハンカチに、名前、メッセージ、手描きイラストなどを刺しゅうするサービスを始めようと考えました。オリジナルのものは、贈っても、もらってもうれしいのではないかなと。
 そこで、名前はもちろんお絵描きの刺しゅうが入れられるミシンを購入。サービスを始めたばかりですが、10人以上のお客さまにご利用いただいています。その中に「お嫁さんが描いた孫の絵をタオルに刺しゅうしてほしい、サプライズでプレゼントしたい」と来店されたお客さまがいました。出来上がった商品を見て、とても喜ばれて。その様子を見ていて、「私がやりたかったことは、お客さまに喜んでいただくこと」だと、改めて実感しました。刺しゅうサービスは披露宴の席札ハンカチや誕生日、記念日など折に触れて贈り物として使っていただけます。またタオル以外にもTシャツや布バッグなどさまざまなものに刺しゅうをして、付加価値をつけていきたいと考えています。
 ほかにも、松本駅から松本城・旧開智学校までの地図をタオルに描いた「城下町松本MAPタオル」を作製。日本語と英語を絡め、国内外からの観光客や地元の方々が楽しく散策できるデザインにしました。マップの中に載せたホテルや施設に営業に出向き、商品を置いてもらうようにしました。
―今後の方針は
 20年近く雑貨の店をやってきた中で、フランチャイズを抜けたり、大型ショッピングセンターができて人の流れが変わったりと、大変なときもありました。そんなときもお客さまやメーカーの方、スタッフ、家族に支えられて、やってこられたと思います。
 今、服をメインに展開していますが、女性は年齢とともに似合う色や服の形が変化したり、肌触りや着心地も重要なポイント。ナチュラルでシンプルで、長く着られる服を提案していきたいですね。
 「モンファヴォリ」はフランス語で「私のお気に入り」の意味。女性、特に家事や子育て、介護に、仕事にと忙しいミドルエージの女性にとって居心地がいいと感じられる、「お気に入りのお店」になれればうれしいです。

 【でんどう・あきこ】 松本市出身。2001年、有限会社プラスニジュウイチ創業と同時にスタッフに。02年、同社がフランチャイズの雑貨店に加盟、店舗経営に携わる。19年、代表に就任。二級建築士、インテリアコーディネーターの資格を持つ。