[創商見聞] No.89 「はる接骨院」 (春原 潤也)

 「創商見聞 クロスロード」の第89弾で伺ったのは、大町市で、今年3月に創業したはる接骨院の代表春原潤也さん。創業までの経緯や将来の目標などを聞いた。

大町の健康をサポート

【すのはら・じゅんや】28歳、長野市出身。信州医療福祉専門学校(現・信州スポーツ医療福祉専門学校)卒。柔道整復師。2023年3月創業、代表院長就任。

はる接骨院

大町市大町2495 ☎0261-85-4241

―水泳選手からトレーナーへ
 長野市出身で、小学校からずっと水泳をやっていました。高校では平泳ぎで、インターハイや国体に出場しました。
 中学3年の夏の県大会直前、右足の指を骨折し、選手生命に関わりかねない、大けがをしました。
 その時、通った接骨院に丁寧にサポートしてもらい、なんとか出場して、北信越大会へと進むことができました。
 「間に合わせてもらった」感覚がとても強く残り、自分の人生に大きく響いたターニングポイントだったかもしれません。高校時代も水泳を続ける中で、何度かけがをし、その都度接骨院などに通いました。
 水泳に、サポートする側で携われていけたらどんな感じだろう、と考え始め、医療系の道に進みたいと思うようになりました。
 進路は、大学も考えましたが、実践的な専門学校を選びました。在学中は、水泳教室でコーチのアルバイトもしていました。現役の選手は退きましたが、今でも選手をサポートする側として、長野県水泳連盟に所属しています。
―接骨院で経験を積む
 専門学校の卒業と同時に柔道整復師の資格を取得。安曇野市の接骨院で約3年、須坂市の接骨院でも約3年勤め、経験を積みました。
 創業のビジョンはあまりなかったのですが、働いていく中で少しずつ固まっていった感じです。 
―妻の故郷大町へ
 2020年4月、新型コロナウイルス感染に伴う緊急事態宣言が出る中、結婚しました。働いていた須坂市の接骨院もとても大変でしたが、将来をいろいろ考え、改めて創業の意志が固まりました。長野市や松本市も検討しましたが、妻の実家の大町市を一番の候補地にしました。
 まずは市内の商店街を何度も歩き、物件を探しましたが、意外に空き物件に連絡先の看板がなく困りました。
 同じ時期に、創業した知人たちから「地元の商工会議所に相談するといいよ」とアドバイスを受け、大町商工会議所へ行きました。相談に行くと、「あの物件だったらあのオーナー、この物件だったら―」と、地元のネットワークを生かし、いろいろ紹介してもらい、現在の物件の契約まで進めました。また、創業相談もスムーズで、事業計画書の作成や補助金申請など、準備も順調にいきました。内装や電気工事などでも、親切な業者さんを多数紹介してくれ、よくしてもらいました。
 ただ、初期投資として、超音波観察装置や干渉波電気治療器など最新の器具を導入したため、自己資金や補助金だけでなく、金融機関からも融資を受けました。


―事業計画以上で少し驚く
 創業に際し、商工会議所に提出した事業計画には、市場調査の項目があります。事前に大北エリアの市場状況を調べましたが、長野市や松本市と比べると大町市には接骨院が少なく、新規事業として成立する可能性は高いと感じていました。
 オープンから半年ほどは、1日3人くらいの事業計画でした。現在、開業から約10カ月経過し、平均来院数は、1日15人に上り、少し驚いています。
また、高齢化が進む土地柄として、年配の方が多いかと予測していましたが、実際は30、40代の働く女性が7割を占め、仕事や家事などで生じた腰や肩の不調の相談が多いです。
 妻はペリネ(骨盤底筋)ケアリストの資格を持ち、院のスタッフです。産後の女性向けにエクササイズやホルモンバランスによる不調、身体の変化の相談なども受けられます。最近子どもが生まれたばかりで少し休んでいますが、落ち着いてきたら再開したいです。
―日々全力で丁寧に
 創業してとても強く感じたことは「看板の重み」です。やはり雇われて、経営者に守られた環境とは違うので、一つ一つの仕事に大きな責任を感じ、看板を背負うプレッシャーを感じています。多くの来院はありがたいですが、新規オープンの効果だとも思います。 
 でも、まだ来年や2年後は考えず、目の前の仕事を日々全力で、丁寧に向き合っていくことが今は大事だと考えています。
 水泳を続けてきた縁もあって、昨年度は県水泳連盟の強化チームのサポートメンバーに選ばれ、トレーナーとして国体の選手団に帯同させてもらいました。
 大会で選手のサポートやケアをするサブブースなどで、東京など県外強豪チームのトレーナーがどんなことをしているのか、自分の目で確かめられたことは、とても勉強になりました。
 けがや疲労とどう向き合い、付き合っていくか。どんな形で選手をサポートしているのか。有名選手たちへのアプローチの仕方は―など、「目からうろこ」の連続でした。
―一線での勉強とこれから
 スポーツサポートの一線での体験は、自分にとって大きな財産です。仕事にもっと取り込み、生かしていきたいです。
 28年には長野県で国民スポーツ大会も予定されています。さらに精進し、少しでも県の水泳発展のために尽くせたらと思っています。
 大町市は運動公園や体育施設が充実し、市民スポーツ団体も多く、スポーツが盛んな印象があります。
 少し大げさなビジョンかもしれませんが、自分の仕事が大町市のスポーツサポートの情報発信地になり、市民の健康年齢を高めることにつながれば、うれしいです。
  (聞き書き・田中信太郎)