[創商見聞] No.85 「oHaNa hair design」 (高橋 和也)

 「創商見聞 クロスロード」の第85弾は、は、大町市で営業するヘアサロンoHaNa hair design(オハナヘアーデザイン)のオーナー、高橋和也さんに、創業までの経緯やコロナ禍を乗り越えた工夫などを聞いた。

家族で気軽に どんな時も

【たかはし・かずや】42歳、中野市出身。松本理容美容専門学校卒。東京などで現場修業や大手サロンでの管理職業を経て、2013年、妻華子さん(42)と創業。 

oHaNa hair design

大町市大町 神栄町2667-14 ☎0261-85-0487

―カリスマ美容師ブームの中
 中野市で生まれ育ち、長野オリンピックが開かれた1998年は、18歳の高校3年生でした。実家はテントやシートを作る縫製加工業。五輪開催2、3年前の建設ラッシュ時に比べ、明らかにトーンダウンしていく家業に、何となく将来を見通せないと感じていました。進路を迷っていた時に、通っていた美容院のお兄さんから「美容師はいいよ」と勧められ、軽いのりで美容学校に入学しました。
 当時は〝カリスマ美容師〟の大ブーム。テレビで美容師を扱った番組が次々に放送され、「カリスマ」が流行語大賞にノミネートされたほど。中でも、全盛期のトレンディードラマで、美容師を主人公にした番組が放送された2000年には、その人気はピークに。 もちろん美容学校にも「おれもカリスマになってやる」的な、意識の高い仲間が多くいましたが、自分は周りとの温度差にかなり戸惑いました。
 卒業後は5年ほど、東京の大手ヘアサロンに勤めました。05年に結婚し、今度はショッピングモールなどに出店する、全国展開のサロンチェーン店で働きました。長野県内店舗の管理職でした。広い県内を臨店したり、都内での会議に頻繁に出席したり、多忙な日々を過ごすうちに、「マネジャーワーク(経営管理)よりもサロンワーク(現場)に戻りたい」という気持ちが強くなっていきました。
 08年に子どもが生まれ、妻とも相談し、生まれ育った北信エリアでの創業を計画しました。しかしこのエリアは激戦区で、特に中野市はサロンの出店が多く、店舗物件の価格も高い。どうするか悩んでいたとき、たまたま妻の実家大町市に帰省し、売りに出ていた現在の土地を見つけました。北信に比べ好条件だったことや、以前妻の伯母が大町で経営していたサロンから大型鏡などを譲り受けることができ、初期費用も抑えられそうでした。
 元々、長野市や松本市での開業にこだわりはなく、複数の店舗営業も考えていなかったので、「大町に移住し、じっくりやろう」と決め、13年に店をオープンしました。
―大町の特性をつかんで
 人口が多くない地方都市で開業するリスクは、もちろん感じていました。ただ、損益計算やマーケティングは管理職の仕事をしていたおかげで、人口や店舗数などから、適正な店の席数や設備の規模を検討できました。妻と2人で働く場合の、1日の受注件数や新規客がリピーターとなる割合なども算出。開業後も、当初見込みと大きな誤差はなく、店を続けていけました。
 でも大町には妻の同級生や親戚がいたくらいで、私にはまったく人脈がありませんでした。そこで大町商工会議所の青年部に加入し、少しずつですが地元の活動に関わるようにしました。徐々に知り合いが増え、ネットワークも広がり、お客さまを紹介してもらえる関係を築くことができました。
―コロナ禍で苦境
 日々の課題に向き合い、店を営んできましたが、コロナ禍で、本当に大きなダメージを受けました。
特に20年夏、店でコロナ感染が広がったようなうわさが流れ、キャンセルが殺到しました。また、私がコロナと関係ない事情で4日間入院したときは「店主が感染したらしい」とのうわさが広まり、離婚説まで浮上。周囲からは「大丈夫?」と変な心配をされたくらいでした。
 まさか自分たちが風評被害を受けるとは思ってもみなかったです。地域社会でうわさが誇張され、拡散していくスピード感は半端ない。どうにかしようと思っても何もできず、ひたすら鎮火を待つだけです。本当に苦しい「予約ゼロ」の日々でした。
 まず、お客さまに安心してもらうしかなく、理美容業界の感染対策ガイドラインに沿い、消毒の徹底、席数の削減、完全予約制などを取り入れ、改善していきました。


―セルフ脱毛を導入
 コロナ対策の徹底に加え、美容以外の事業も必要だと感じました。非接触型で何か新しいサービスを提供できないか―。
 注目したのは「セルフ脱毛」でした。サロンの席数を減らしたスペースに個室を設け、セルフ型の光脱毛マシンを置きました。動画のガイドに従って約10分の操作するだけで簡単ですし、クリニックなどの対人型と違い、他人に体を見られたり、触られたりするなどの抵抗感もありません。大町商工会議所に持続化補助金の適用を申請し、採択され、今年2月から本格的に営業しています。
 女性向けなイメージで展開していますが、おしゃれへの関心が高い男性にもお勧めです。
 また、ファッションや身だしなみとは別になりますが、対象者の清潔性を保つ「介護脱毛」としても提案していきたいです。高齢化が進む地域としても大きな需要の可能性を感じています。実際にはシニア層の利用はまだ少数ですが、抵抗感なく気軽に利用できるようアプローチしていきたいです。


―娘と一緒にフロアに立つ日を
 セルフ脱毛も浸透してきましたが、正直売り上げは、コロナ前の水準に戻せていません。
 でも、なんとか10年営業できました。「oHaNa」という店名は妻の名前にもちなんでいますが、ハワイの言葉で「家族」という意味で、気軽に立ち寄ってもらえるイメージにしたいと、名づけています。これからも「家族みんなに利用していただけるサロン」を目指します。中学生の娘は、美容師に憧れを持ってくれているようなので、何年か先には一緒にフロアに立ってみたいです。
  (聞き書き・田中信太郎)