2020.11.19 日本地域情報コンテンツ大賞・タブロイド部門で2年連続優秀賞

枯死したハイマツに宿る「龍神」(北アルプス・乗鞍岳)

枯れたハイマツの幹に現れた「龍神」を連想させる神聖な造形。慈しむような表情が温かい
=ニコンD5ニコンニッコールEDVR80~400ミリ 8月20日午後1時

命の尊さ伝える大自然の「生と死」

松本市と岐阜県高山市にまたがる標高3026メートルの北アルプス・乗鞍岳。ハイマツの緑が続く雲表の登山道を歩いていると、枯死し風化したハイマツの幹に目が止まった。「龍神だ!」
複雑に曲がり、ねじれ、絡み、折れ、ひび割れた不思議な造形の白い幹。幾星霜、厳しい気象条件の中で生き抜き、そして命を終えたハイマツの「履歴書」のように映る。その帰結として、龍神が宿ったかのような姿になったのだろう。思わず「輪廻(りんね)転生」の言葉が脳裏をよぎった。
「龍神」には、目も、口も、角もあり、躍動感が伝わってくる。大自然の摂理と緻密な造形美の不思議さに思わず息をのんだ。白く枯れた幹を優しくいたわり包みこむ周囲の緑。望遠レンズ特性の圧縮効果を生かして切り撮ると、ファインダー内に「生と死の構図」が強烈に迫ってきた。
何百年にもわたって緑の葉を茂らせてきたであろうハイマツ。その枯れた姿に、人の命の儚(はかな)さがオーバーラップした。大自然が見せてくれた「生と死」の対比。あらためて、命の尊さと生きていることの素晴らしさが、新鮮な感動となって伝わってきた。また一つ、山から学んだ。
世界中がコロナ禍に見舞われた今年の夏も、もうすぐ終わろうとしている。雲表に現れた「龍神」に、疫病の早期収束を願わずにはいられなかった。
(丸山祥司)