満天の星空とツキヨタケの共演(小谷村雨飾高原)

暗闇に光る「クリスマスツリー」と、それを飾るように輝く満天の星
=ニコンD5ニコンニッコールAF-S16ミリ 10月27日午前3時5分

命尽きたブナの「クリスマスツリー」

信越県境に近い小谷村雨飾高原で撮影した、ツキヨタケがびっしり付いたブナの枯木。まるで大きなクリスマスツリーのように見える。通常のツリーはモミなどの常緑樹だが、ここの「ツリー」を包む緑はツキヨタケの淡い光だ。11月20日付の紙面で紹介した満天の星空との共演を、今回は連続撮影でお見せしたい。
中央の「ツリー」の右上が北極星。左側にある黄色っぽい太い線がベテルギウスだ。横切るように通った人工衛星とみられる光跡と交わる。その光跡が延びた先、ベテルギウスの左側にある白い太い線がシリウス。ブナの葉の間から光を放っている。シリウスの右上にある太い線がプロキオンだ。これで冬の大三角がそろった。
星の下の「クリスマスツリー」は、ブナの死から始まった。幹が折れ、枯れたブナはツキヨタケの菌床となり、枝が繁茂していた領域は星の光が届く空間になった。豪雪に耐え、初夏に若葉を茂らせ、秋にはぽろぽろと実をこぼす。そうやって命を燃やし、尽き果てた先に生まれた光景。このブナの生と死の証しでもある。
ひっそりとした山奥で続いてきた長い時間の流れの中では、この「クリスマスツリー」はほんの一瞬。その刹那に、極端な露光値の差がある星とツキヨタケを写せるデジタルカメラを手に居合わせることができた僥倖(ぎょうこう)に感謝した。