初秋の高嶺を彩るトウヤクリンドウ(乗鞍岳)

日差しを浴びないと開花しないトウヤクリンドウと、名残花のイワギキョウ(左上の青紫)の共演を撮影していると、クジャクチョウが飛来。驚きの幸運の光彩に出合った=ニコンD5、AF-S ニッコール105ミリマイクロレンズ、17日午前

白い花園クジャクチョウ舞い降りる

高山植物の宝庫として知られる乗鞍岳。17日午前、標高2760メートルの登山道沿いで、高嶺(たかね)の花ごよみの終わりを飾るトウヤクリンドウが日差しを浴びほほ笑んでいた。
和名は漢字で「当薬竜胆」と書く。根が強烈に苦く胃薬になることから命名。リンドウ科リンドウ属の多年草。草丈10~25センチ、筒状の花冠は3~4センチ。学名はゲンチアナアルギダ(Gentianaalgida)。
花は一般的には、淡い黄色で花弁に緑色の斑点があるのが特徴だ。白馬岳、槍ケ岳、燕岳、常念岳、蝶ケ岳などはこのタイプ。乗鞍岳にはこれとは別に、花が白色系で花弁に青紫色の筋模様が際立つ株が混在している。
2006年、この個性的なトウヤクリンドウに気付いたのは、安曇野市穂高の写真家でエッセイストの上條光水(こうすい)さん(71)だ。
当時、日本の高山植物の権威といわれた信州大名誉教授(植物分類学)の清水建美(たてみ)さん(故人)は「白い花弁に青紫の模様が美しい花だ。トウヤクリンドウの花の変わりものとみるが、系統が違う可能性もありDNA鑑定することが望ましい」と話した。
その後の記者の調べで、御嶽山と八ケ岳の硫黄岳で白花系を確認。素人の推測だが、火山性土壌の影響では?そんなことを考えていると突然、かれんな白い妖精の花園にクジャクチョウの天使が舞い降り、夢のような、鮮やかな光彩の領域に変わった。

(丸山祥司)