美ケ原電波塔群を抱いて昇る荘厳な満月(松本市笹賀)

昇る満月に抱かれくっきりと浮かび上がる美ケ原高原の電波塔群。幻想の宇宙基地を連想させる=ニコンD5、ニッコールAF-S1200㍉、2023年11月27日午後4時42分38秒、松本市笹賀

異次元に広がる「幻想世界」

11月27日夕、松本市笹賀のリンゴ畑の農道沿い。幸運にも美ケ原高原王ケ頭(2034メートル)から昇る満月に出合った。
突然のチャンスに1200ミリの超望遠レンズ付きカメラで迫った。ファインダーをのぞいた瞬間、異次元の不思議な光景が迫ってきた。神々しく昇る満月の中に、20キロ先にある電波塔群の幾何学的なシルエットが、くっきりと浮かび上がる。この撮影は、超望遠レンズの表現力である「圧縮効果」または「引き寄せ効果」と呼ばれる特性を生かした。ファインダーの中の光景は幻想世界さながらで、宇宙基地をイメージさせる。
電波塔群を抱いて昇る月の動きは見かけ上、速く感じられる。王ケ頭の山頂に見えてから、電波塔群を約3分28秒で通過した。
昇ったばかりの少し赤っぽく見える満月に、「海」と呼ばれる黒ずんで見える月面模様がくっきり浮かび上がる。日本ではこの模様を今年の干支(えと)でもあるウサギに見立て、「うさぎの餅つき」と呼んでいる。
長い耳は、豊かの海と神酒(みき)の海。静かの海が顔、胴体は晴れの海と雨の海。餅をつく臼は雲の海と湿りの海を見立てている=図参照。
ぴょんぴょん跳ねるウサギにあやかり、飛躍を願った今年も、あとわずか。雲間に見え隠れする美しい満月に感謝しながら、今一枚シャッターを切った。
(丸山祥司)