【ガンズリポート】山雅サポーターが選ぶベストマッチ

らしさ際立つ逆転劇

2012年にJ2に初参戦した松本山雅FCは、今年がJリーグ10年目。「リーグ戦のこれまでのベストマッチは?」。クラブがサポーターに募ったところ、最も票を集めたのはメモリアルな試合ではなく、粘り強い逆転勝ちの一戦だった。その試合でプレーしたMF下川陽太は「山雅らしい試合だった」と振り返る。
2018年7月25日、大宮アルディージャ戦。夏の水曜夜のアウェーに、約2300人の山雅サポーターが駆け付けた。
下川の登場は後半開始から。山雅は1人少ない上に、0-1とリードされていた。
「反町康治監督の指示はよく覚えている。『1・5人、2人分走らないと勝てない。弱気にならず、ボールを持ったら2、3人ぶち抜け』って。走るのは言われるまでもないこと。ピッチで思い切ってプレーした」
PKで同点。会場の雰囲気が変わるのを感じたという。
「こっちにガッと戻ってきた。フィールド全体が熱気を帯びる感じ。普段は聞こえないようなサポーターの声も聞こえてきた。『もう1点だ』『まだまだこれから』とか、一人一人の声が耳に入ってきた。あんなことはあまりない。山雅ならではのサポーターとの一体感だった」
翌年から期限付き移籍した愛媛FC、ツエーゲン金沢を含め、Jで5季目を戦う25歳の実感だ。
試合は、FW永井龍(現サンフレッチェ広島)のゴールで勝ち越し。下川は得点には直接絡まなかったが、追い越す走りが永井へのマークを甘くし、シュート機会を広げた。そして、山雅はそのまま勝ち切った。
「強いぞと証明できた気がして、チームはより一つになった」
それから3年、最下位も経験した今季、チームで「山雅らしさ」を確認することもあった。
「僕が思う山雅は、チーム全体で泥臭く勝ちを求めていく集団。大宮戦のときも、誰ひとり、勝ちを諦めていなかった。(勝ち越し点を挙げた永井)龍君を追い越した僕のプレーも、山雅らしいってことなのかなと、今思う」(写真は松本山雅FC提供)

メモ
【大宮戦の展開】
山雅は前半、35分にMF中美慶哉(現マルヤス岡崎)がラフプレーで一発退場し、ロスタイムに1点を先取された。後半の開始からFW前田大然(現横浜F・マリノス)に代わり下川が出場。11分に永井のPKで追いつくと、19分に長い縦パスを受けた永井がミドルシュートを決めて勝ち越した。
この一戦で首位を守った山雅は、その後3位以下に落ちることなく、J2初優勝を果たして2度目のJ1昇格を決めた。