里山に安全に登る心得

里山登山を楽しむシニアが増えている。気軽に出かけられ、山頂からの眺望や開放感、運動による心地よさなどが味わえる一方、事故や遭難など危険を伴うのも事実だ。「夏山ハイシーズン」に向け、安全に楽しく登るための心得を県山岳総合センター(大町市)の傘木靖所長(63)に聞いた。
県内の2022年の山岳遭難発生状況を年齢別にみると60、70代が全体の45・5%、死者と不明者は同70%近くを占めている。高山だけでなく里山での発生も増えている。
シニアの登山者は主に(1)若い頃から継続的に登っている(2)定年退職後に新たに始めた(3)若い時に3千メートル級に登ったが中断し、定年を機に再開─の3パターン。事故が多いのは(2)と(3)と思われる。
中でも注意が必要なのは(3)。若い時のイメージでいきなり登れると思いがちだが、体力とバランス感覚は確実に低下している。日常的なウオーキングなどで体力を付け、低山に登って自分の体力を知るなど、慣らしていくのが重要だ。
安全登山のためには▽事前に最新情報(天候や登山道の状況など)を収集、調査(行政が出している里山の案内図なども分かりやすい)▽早出・早着▽迷いやすいルートに注意(遭難原因の1位は道迷い)▽転倒や滑落に注意(小石がごろごろしている所や落ち葉に浮き石が隠れている場所などに足を取られやすい。全体的に緩やかでも部分的に危険な場所がある里山もある)▽家族や友人に一言伝えて入山|を心がけてほしい。
生涯スポーツとして楽しむために、「しっかり準備をして気を付けて登り、下山後に振り返る」を提案する。登って終わりではなく、装備や体力などの反省点を検証し次に生かしてほしい。
装備は持ち物チェックリストを参考に(シニアは特に万全に)。高機能であるほど、体力や歩行技術を補ってくれる。履き慣れた靴でも古いと経年劣化で足裏のゴムが硬くなり滑りやすい。歩行を補助するポールも便利だ。
お薦めの里山は近隣では大町市の鷹狩山、安曇野市の光城山、長峰山など。当センターが行ったアンケート「信州の里山・総選挙!『冬山編』」は夏山でも参考になる。公式ホームページで紹介しているので登りたい山を探してみては。
里山に登れるようになったらステップアップして北アルプスなどに挑戦するのもいい。登山ルート別に難易度を評価した「信州山のグレーディング」を参考に選び、無理をせず1泊2日など余裕を持った計画を。

同センターでは「シニア安全登山教室」を開催。9月14日は風越山(飯田市)で登山中のトラブルについて、10月13日は美ケ原高原(松本市など)で地図の利用方法、11月1日は守屋山(諏訪市など)で、いつまでも元気に山登りを楽しむ|がテーマ。参加費は各3千円。問い合わせは同センターTEL0261・22・2773