オーディオに魅せらた二木さん 自作スピーカーで至福の時

たんすほどの大きさの巨大なスピーカーに真空管アンプ…。男性には憧れる人が多いオーディオシステム。それらを手作りするとなれば、こだわりは半端ではない。安曇野市豊科高家の二木隆夫さん(76)は、オーディオに魅せられ、こだわり続けた一人で、約20年かけ、「理想の音が出るようになった」というシステムがようやく完成。自作のスピーカーから流れる音楽を聴く至福の時を満喫している。
二木さん自慢のオーディオルームの広さは約20平方メートル。音に広がりが出るよう、天井には傾斜がついていて、高さは3~5メートル。オーディオルームの大敵という残響音を取り除くため、スピーカーの横の壁に、穴の開いたベニヤ板を取り付け、いい音を反射させるため、スピーカーの後ろの壁にもベニヤ板を張った。
早速、ジャズのCDを聴かせてもらった。音がクリアで厚みを感じ、演奏者がその場にいるような臨場感がある。記者の自宅のオーディオやカーステレオとは全く異なる、今まで耳にしたことのない音質だ。
約20年かけて完成させたスピーカー。納得のいくものを求めて、作っては壊しの連続で、これまでに40個ほど作った。5月の連休明けに完成したスピーカーの低音域用は高さ1メートル、幅75センチ、奥行き52センチのビッグサイズ。ウーハーは直径38センチ。中音域用のスコーカー、高音域用のツイーターも手作りだ。
一方、アンプは約10年かかった。温かみのある音の要となる真空管は、イギリス、ドイツなど欧州製が好み。音を増幅させるパワーアンプの真空管はイギリス製、音の入力切り替えや音質調整をするコントロールアンプはドイツ製だ。
「同じメーカーでも年代によって音質が全く違う。古い物ほど素晴らしい音になる」とこだわり、「年代物はなかなかなく、オークションなどで入手」と苦心している。
「どのくらいの大きさにすればいい音が出るのか」など、全てが手探り状態から始めたオーディオ製作。かかったのは時間だけではなく、スピーカーは70万円、パワーアンプは80万円、コントロールアンプは10万円、高、中、低音域の信号を分ける機械、ネットワークは7、8万円と、費用もかかった。
二木さんがスピーカーやアンプなどを作り始めたのは18歳の時。当初は機械いじりが好きで、「音は二の次だった」というが、全国に仲間が増えたり、東京に手作りアンプの試聴会に出かけたりして、徐々に「いい音」のとりこになった。
設計や出力の計算、材料の調達など、ゼロから始めた音作りはようやく理想の形となった。「楽器配置まで分かる音。これまでの集大成」と胸を張る二木さん。東京などから聴きに訪れた友人が、その音にほれ、「また聴きたい」。二木さんの長年の努力と苦労が報われる瞬間だ。
これからは、自分が作り上げた「完璧な音」で、クラシックやジャズなど、さまざまな音楽を楽しむ時間が待っている。