塩尻市広丘野村の第八常会集会所で毎月第2、4木曜の午後、住民有志がスタッフになり、喫茶「えんがわ亭」を開いている。近所の高齢者らが足を運び、お茶を飲みながらおしゃべりを楽しむ。家に引きこもらず、気軽に寄れる場所を-と始めて9年。どんな人たちが集うのか。「手づくり喫茶」を訪ねた。
「こんにちは。いらっしゃい。どうぞ中へ」。歩いてやってきた高齢者が顔を出すと、スタッフたちが笑顔で迎える。午後2~4時のオープン時は、集会所の入り口と前の県道沿いに、「えんがわ亭」の案内看板が出る。
室内には机と椅子を並べ、「えんがわ亭」と書かれた紺色ののれんも掛け、楽しげな雰囲気を演出。参加費の300円を払って座ると、おいしいコーヒーやお茶と、菓子が提供される。コーヒーはお代わり自由だ。
スタッフは60~70代の男女12人。集まってくる人たちと野菜の育て方や、おかずのアイデア、季節の花のことなどさまざまな話題で盛り上がり、あちこちで笑い声が響く。
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えんがわ亭を立ち上げた住民の一人で、代表の前内陽(あきら)さん(79)は「地区外の人でも誰でもウエルカム」とほほ笑む。市内の他地区や安曇野市から来る人、赤ちゃん連れのお母さん、夏休みに孫と来る人も。オープン中は誰でも出入り自由だ。
オープン当初から通う村中清子さん(81)は「スタッフの方たちは、みんな気のいい人たち。ご近所さんと一緒に来て、ここでゆっくりおしゃべりできるのがいい」。隣の七常会の西尾純雄さん(80)も常連で、「1人暮らしだと出かけるのがおっくうになる時もあるが、えんがわ亭の日は楽しみにしている」と笑顔を見せる。
5、6年前から来ているという広丘原新田の林生次さん(77)は「アットホームな感じで居心地がいいから来ちゃう。いろいろな話ができて勉強にもなる」と喜ぶ。
えんがわ亭は、前内さんら住民3家族が、「年を重ねたら家に閉じこもらずに、寄れる所をつくろう」と話し合い、集会所を借りて2014年6月に始めた。誰でも気軽に立ち寄ってお茶を飲んでいく、近所の「縁側」のような場所に-との願いを込め名付けた。
コロナ禍で3年ほど閉めざるを得なかったが、今年4月から再開。コロナ前は、近くの高齢者施設からも参加があり、40人近くになることも。7月13日の167回目は、16人が集まった。
以前は障がい者就労支援施設から買った焼き芋やケーキ、スタッフが持参した漬物などを出していたが、コロナ対策で現在は、個包装の菓子で対応している。
運営を支えるスタッフは、開催日に時間のある人が来て、途中で帰っても休んでもよく、負担を少なくしている。9年前に誘われてスタッフになった牧野初子さん(72)は、「常会の人と知り合いになれて近所付き合いが変わった。スマホの操作を教えてもらうなど、情報交換ができてうれしい」と喜びを感じている。
前内さんは「話すのが苦手な人は聞いているだけでいい。家に閉じこもらず、木曜は出てきて」と呼びかけ、「高齢者の孤立を防ぎ、地域の絆を深めるために、各地でこういう場ができれば」と願っている。他地区からの見学も歓迎する。
えんがわ亭は、年末を除き毎月開催。場所は国道19号「野村」交差点を東へ300メートルほど行った左側。スタッフも募集中。