9月は防災月間。一般社団法人ペットフード協会(東京)の2022年の実態調査によると、全国の犬、猫の推計飼育頭数は計1589万匹で、15歳未満の子どもの数を上回るという。自分や家族の命を守ることと併せ、飼い主や地域は、災害時のペット対策も考え、備えておきたい。松本市保健所食品・生活衛生課乳肉・動物衛生担当係長で獣医師の半田八重さんに、ポイントなどを聞いた。
同行避難対応へ 道具見本に
松本市内の飼い犬の登録数は1万匹余。猫の数ははっきりしないが、犬猫合わせると約2万匹と推計される。
近年では「ペットは家族」という考え方が主流。それゆえ、災害時にペットを残して避難することをためらったり、置いてきたペットを心配して自宅などに戻ったりして、飼い主が被害に遭う事例がある。
一方、2011年の東日本大震災などの際は、やむを得ずペットを逃がしたり、置き去りにしたりしたことによる野犬化や繁殖の問題が生じた。
このような経験や動物愛護、飼い主の心のケアの観点からも国は、避難が必要な災害時には飼い主の自己責任で「同行避難」を推奨する。
松本市は3月、南部屋内運動場(野溝東2)をペット同伴避難者の専用避難所に指定。ケージやキャリーバッグに入る屋内飼育の犬、猫、小動物と一緒に過ごせる。しかし、動物の種類ごとに区分けなどをすると、スペースは約30世帯分で、半田さんは「自宅に近い指定避難所(市内159カ所)での同行避難の受け入れ準備も進めていく必要がある」と指摘する。
市は避難所運営を担う各地域住民に、受け入れ態勢の検討を呼びかけていて、数は少ないが、検討の動きが見られる地区もあるという。
こうした状況に合わせ市は、人が過ごす屋内にペットの連れ込みができない指定避難所での受け入れに役立つ道具類をまとめた見本「スターターキット」を用意。体育館の軒下といった屋外や半屋外に、風雨や日差しを遮るなどしてペットが過ごせる場所を確保するための設営用品や、給餌に必要な容器、衛生対策に用いる道具などで、希望する地区に貸し出し、参考にして準備に役立ててもらう。
飼い主向け冊子 活用を
市保健所は3月、飼い主向けの冊子「ペットの災害対策ガイド」を2千部作成した。飼い主の留守中に被災したペットの対処方法の検討や、家具の固定、窓ガラスの飛散防止対策といった日常過ごす場所の安全確保、避難時持ち出し品や備蓄品などを紹介する。
さらに、「ケージやキャリーバッグを用意するだけでなく、嫌がらずに入ることができる」「寄生虫を予防する」など、日ごろのしつけや健康管理の重要性を記載。避難先での周囲への配慮や、ペット自身のストレス軽減にもつなげる。脱走防止や迷子対策も呼びかけている。
半田さんは「健康管理やしつけは、短期間で全てできるものではない。災害が起きたらどうなるのかを想定し、できることから手を付けて備えてほしい」と話す。
冊子の内容は市保健所ホームページからも確認できる。