正しい知識で医療施術「アートメイク」で元気に フリー看護師の小牧美歩さん

皮膚に針で色素を注入し、眉やアイライン、唇などを描く「アートメイク」。看護師の小牧美歩さん(41、上田市)は、県内では珍しく病院と業務提携し、フリーランスとして活動する「医療アートメイク看護師」だ。アートメイクは美容目的で人気が高まる一方、知識不足の施術者によるトラブルも多いという。小牧さんは「アートメイクは、人生を豊かにしてくれる。正しい知識を知ってほしい」と、安心安全な施術の普及に力を入れる。

悩みを解消して健康につなげる

塩尻市広丘原新田の「ときのクリニック」。小牧さんが業務提携している二つの病院の一つで、県内での施術はこの病院内の1室で行う。
取材日の1月19日は、唇に色を入れる施術をした。このお客さんとは2回目の対応で、既に問診は終了。この日は唇に麻酔をし、先端に細い針の付いたアートメイク専用のマシンで、手際良く唇に色素を注入。「痛かったら言って」などと気遣いながら、約1時間半の施術を行った。
これまでに千件以上の施術実績のある小牧さんだが、「アートメイクは技術職。毎日、人工皮膚を相手に2、3時間のマシンの練習は欠かせません」と努力を怠らない。
近年アートメイクは、20、30代は子育てなどで忙しく、化粧をする時間がない、50、60代はうまく化粧ができなくなった-などの理由で人気が高まり、また抗がん剤治療などによる脱毛で悩んでいる人の需要も多いという。
一方、「タトゥーと同じ」や「エステサロンなどでもできる」といった誤解をしている人もまだいるとし、「こうしたことがトラブルの元になる。正しい情報を発信していきたい」と話す。
上田市出身。宮崎県の看護大学を卒業し、県内の病院に勤務。2020年、母親にがんが見つかった。「美容に関心の高い人だったので、脱毛する前にアートメイクをしてやりたかった」と、スクールなどに通って勉強を開始。同時に県内でアートメイクをしている所がほとんどないことを知り、自身で本格的に取り組むことに。昨年4月からはときのクリニックと、東京・恵比寿の病院と業務提携し、フリーランスとして活動している。
今後の「超高齢化社会」を見据え、病気が原因で脱毛した人の悩みの深さをおもんぱかった上で、「眉や唇などの化粧がコンプレックスになり、外に出なくなると、それが健康寿命を縮める原因にもなる」とし、「アートメイクの正しい知識を広め、地域の人たちを元気にしたい」と力を込める。
問い合わせはLINEから。

【アートメイク】2005年、アートメイクは医療行為に認定され、医師または医師の指示の下、看護師が施術を行うことが義務付けられた。公的医療保険の適応外。
タトゥー(入れ墨)が皮膚の「真皮層」にインクを入れ、永久に消えない一方、アートメイクは「表皮層」に色素を入れ、肌のターンオーバー(生まれ変わり)で徐々に色が抜けるのが特徴。