塩尻の寺西さん 伝統行事映像で記録し40年

塩尻市宗賀の寺西定雄さん(77)は、市内の祭りや儀式など伝統行事を40年ほど撮影し続けてきた。自分で編集した映像は、DVDにまとめたり、動画投稿サイトに掲載したりしている。途絶えてしまった行事もあり、地元の人から「記録に残してくれてうれしい」と感謝されている。

消える習わし復活にも期待

最初は、自分の子どもを撮るためだったが、撮影が趣味の仲間ができ、一緒に市内各地に出かけるようになった。
人づてで行事の情報が入るようになってくると、1人でも訪れるように。「玄蕃まつり」から、小さな村祭りまで、行事を撮って回った。
自営の製造業の合間を縫っての撮影は、1日がかりになることも。小野神社(北小野)の御柱(おんばしら)祭は、御神木選びから撮った。
片丘地区の一部で行われる「庚申講(こうしんこう)」は、山盛りのご飯を食べて親睦を深めるのが習わし。「撮るならおまえも」と言われ、3杯食べたのは、苦しくも楽しい思い出。同時に、「食事の準備の負担が大きく、今の時代に続けるのは難しい」と、さみしげに語る地元役員の言葉に複雑な思いを抱いた。
長年にわたる撮影では、盛んだった行事が少子化や過疎化で衰えていくケースも目の当たりにした。「役員がやり方を確認するために見てくれることもある。中止になった行事でも、もう一度やってみたいという若い世代が出てくるかもしれない。残した映像を見てやる気になってくれれば撮ったかいがある」と期待する。

動画を再編集外国語字幕も

8ミリフィルム、VHSビデオ、デジタルカメラ…。時代とともに機材が変わり、今はもっぱらスマートフォン。撮影専用に、4K動画に対応する1台を持ち歩く。以前のような長時間撮影は体力的に難しいといい、「花や自然、町並みを好きな時に撮りたい」。
10テラバイト分に及ぶ撮りためた映像の再編集も、最近の楽しみ。編集は、パソコンで1人でこなす。ナレーションは、以前はテレビ松本(松本市里山辺)のスタッフに頼んだが、今は機械の合成音声を使う。自動翻訳で中国語や韓国語の字幕を付けて、塩尻の名所も発信している。
映像はユーチューブに投稿している。「懐かしいと思ってもらえればうれしい」と話す。