新滝の氷柱がいざなう幻想の宇宙(王滝村)

日差しを浴びてきらきらと輝く氷柱に現れた、超新星爆発を連想させる光景=ニコンD5、AF-Sニッコール105ミリマイクロレンズ、2024年2月13日午前10時58分

光り輝く氷に現れた超新星爆発

王滝村の御嶽山3合目半にある落差30メートルの新滝。古くから信者らが滝行を行う霊場として知られるが、厳冬期には天に昇る白龍の氷瀑(ひょうばく)が現れる。
暖冬の今年、2月13日の朝訪れた。氷瀑をはじめ周囲にできる氷柱や氷筍(ひょうじゅん)も暖冬を物語る規模で冬の光彩を放っていた。
太陽光を浴びて輝く氷瀑。その脇で表面が少し解け、きらきら光る氷柱に目が留まった。白、青、黄…。夜空の星を思わせる驚きの光景が浮かび上がった。カラフルに輝く光彩を、マイクロレンズで探しながら撮影していると突然、真っ赤に染まった強烈な閃光(せんこう)が飛び込んできた。「ワァー、超新星爆発だ!」。近年、急に明るさが変化して話題になったオリオン座の1等星、ベテルギウスが脳裏で重なった。カメラがとらえた赤い閃光が、夢の宇宙旅行へと誘った。
ベテルギウスは地球から550光年離れた恒星で、死期が近い老いた星だ。近い将来、最期に超新星爆発を起こすと考えられている。ベテルギウスを失ったオリオン座。あの美しい「冬の大三角」も見られない。星にも命がある。「近い将来って何年後?」。国立天文台によると10万年後だそうである。
夢の宇宙旅行を終えいま一枚、超新星爆発を連想させる光景のシャッターを切った。
(丸山祥司)