繕いおしゃれに「ダーニング」

衣類に開いた穴や、擦り切れた部分や染みなどを糸と針で修繕する英国発祥の「ダーニング」。日本でも、破れ損じたところを目立たないように繕って長く着用する習慣はあるが、ダーニングは繕う部分をあえて目立たせ新たな「おしゃれポイント」にするのが特長だ。「シニアのふだん着ワンピースの店」の店主で、ダーニングを実践する関崎弘美さん(71、大町市平)にやり方や魅力を教わった。
関崎さんに教えてもらいながら、記者が挑戦したダーニングは、縦糸と横糸を組み合わせて織物を織るように面を埋めていくステッチ。まず練習で、漂白剤による菱形状の脱色箇所を、一回り大きい菱形の刺しゅうでカバーした。
縦糸を刺してから、横糸を1本飛ばしで縦糸に渡していく。関崎さんに縦糸の間隔などの助言をもらいながら、ぎこちない手つきで針を運ぶ。表側に現れた模様は不格好だが、脱色箇所はしっかりと隠れた。
本番は、記者のお気に入りだったチュニックの、胸元にできた染み隠しだ。教わった手順でちくちくと針を刺し、横糸をくぐらせていく。またも妙な形の模様に仕上がったが、「これはこれでよし」。
捨てるのをためらっていた愛用のチュニック。一手間をかけることで再び着られるのはうれしいし、修繕箇所がおしゃれのアクセントになるとは驚きだ。
今回は洋服の生地の色に近い刺しゅう糸を使ったが、ポイントになるように補色を選んだり、縦糸と横糸の色を変えたりすれば「おしゃれ度」もアップしそう。他にもまだある傷んだ洋服にも、「ちくちくして長く着たい」という意欲が湧き上がってきた。

人形のワンピース作りをきっかけに小学4年生から洋裁を続ける関崎さん。ダーニングを知ったのは2019年。生活雑誌で目にして興味を持った。
その後、関連本などを参考にダーニングに挑戦。知人のお気に入りのエプロンやかっぽう着の破れや脱色した箇所などを、ステッチや当て布をして見た目もすてきに修繕し、喜ばれた。かっちりとした決まり事はなく、使う糸の種類も色も自分好みだ。
関崎さんは「セーターの虫食いの穴などは目立たないように繕うのが普通だが、ダーニングは自由な発想やセンスを加え目立たせて、前よりもすてきになるのが魅力」といい、さらに「不思議だけれど、少しやると『もっとやろう、もっとかわいくしちゃおう』と思える。既製服も一点物になり、愛着も湧く」と、面白みを話した。
傷んだ衣類に新しい価値を与えるダーニング。サステナブル(持続可能)な社会を目指す現在に、マッチした針仕事として注目を集めそうだ。