16歳 高み目指し海外初戦へ MTBダウンヒル 原つばささん

高速でコースを下る原さん(2022年ダウンヒルシリーズ第2戦、白馬岩岳MTB PARK)撮影・Hideyuki Suzuki

活躍して競技の魅力伝えたい

難所を伴う急斜面を駆け降りタイムを競うマウンテンバイク(MTB)のダウンヒル競技に、情熱を注ぐ女子選手がいる。白馬高校2年の原つばささん(16、白馬村神城、白馬マウンテンバイククラブ所属)だ。
5歳で競技を始め、全日本選手権の女子ユース(13~16歳)で2021~23年に3連覇を達成。22、23年と2年連続でエリート(17歳以上)の優勝者を上回るタイムを記録した。昨年は、ナショナルポイントランキングの年間王者に輝き、国内では敵なしの実力。フリースタイルスキー・モーグルとの“二刀流”で成長を続ける。
世界選手権やワールドカップ出場が可能な年齢を迎え、今季は、さらなる高みを目指して戦いの場を世界に求める。23、24日にオーストラリアのケアンズで、海外初戦に臨む。

負けず嫌いから勝つ喜びを知る

斜面を高速で駆け降りるマウンテンバイクのダウンヒル競技。コーナーや起伏、岩や木の根などの障害を攻略し、ジャンプも決める。高速コースでは時速60~70キロほどに達する選手も。疾走感あふれる戦いだが、大けがの危険も隣り合う。選手にも観客にとっても、スリリングな競技だ。
5歳から取り組む原つばささん。きっかけは、負けず嫌いな気持ちだった。3歳ごろから遊びでMTBを始めてクロスカントリーの大会に出たが、男子も一緒で勝てずにいた。一つ年上の姉あさひさんが大会で獲得した銀メダルを見て、「私は金メダルがほしい!」。
直近で出場でき、“勝てる”レースを探してほしいと親に頼んだ。ちょうどクロスカントリーの大会がなく、「まあ、いいか」とエントリーしたのがダウンヒルの大会。5人中唯一の女子だったが、初挑戦で表彰台の真ん中に。大満足の笑顔を写した写真が残っている。「勝ててうれしかった。それで、ダウンヒルが得意だと思い込んだんですよ」。つばささんは笑いながら回顧する。
当時は小学生が出場できるレースがほとんどなかったが、間もなく白馬村内に「白馬岩岳MTBPARK」が復活し、「そこから本気でのめり込んだ。大会は少なくても走るのが普通に楽しかった」。中学生になり、国内シリーズ戦や全日本選手権で優勝を重ねた。国内では女子選手が数少ない現状もあり、目標や視線は自然に世界へと向けられた。

冬はモーグル 二刀流の強み

ダウンヒルの魅力は「一瞬にかけ、自分で調整できるジェットコースターみたいで楽しい」とつばささん。母の絵梨香さん(47)は「こけやすいし、こけたら大けが。どう考えても怖い」と話すが、娘の活躍を見守り支える。
主に週末に岩岳のコースで練習。コーチはおらず、技術や感覚は走りを重ねて自ら磨いた。持ち前の度胸に加え、視力の良さで瞬時の判断も的確で、バランス感覚も抜群だ。
地の利も生かし冬場はモーグル競技に励む。エアは苦手だが、滑りのスピードは同年代では国内トップレベル。「冬も同じスピード感だから、怖さはあまり感じない」。滑ることにも雪上で慣れている。雨天など滑りやすい悪条件下のダウンヒルレースでもめっぽう速い。二刀流の強みだ。
今季は国際自転車競技連合(UCI)公認の海外レースで結果を残し、ジュニア(17、18歳)代表派遣選手への選出を目指す。海外選手には体格やパワーで劣る分、細やかで丁寧なテクニックを武器に高難度の海外のコースに挑む。「海外初戦は自分の力を試す機会だが、勝ちたい」と意気込む。
「目標は世界のトップ。五輪種目ではないが自分の活躍で魅力を伝え、遊びでも楽しむ人が増えたらいい」。16歳の世界への挑戦が始まろうとしている。