春の風物詩「野火つけ」 雨中ショクの茅場 成長促進や害虫駆除

かやぶき屋根に使う良質なカリヤスとススキが取れる小谷村の「雨中(うちゅう)ショクの茅場(かやば)」で5月11日、「野火つけ(野焼き)」が行われた。成長促進や害虫駆除などが目的の春の風物詩。管理する雨中林野組合の組合員や消防団員ら約30人が作業し、開始から1時間半ほどで一帯に黒々とした焼け跡が広がった。
茅場は山の斜面約14ヘクタールに広がる草原。高い場所から順々に低い場所へ火を誘導し、昨秋に刈り残したカリヤスなどを焼き払った。
雨中ショクの茅場は3月、文化財建造物の修理に資材を供給する、文化庁の「ふるさと文化財の森」に設定され、維持管理の費用に国の補助も受けられる。県内では同村の「牧(まき)の入(いり)茅場」に次いで2カ所目。
小林幸由組合長(79)は「後世に残していけるのはありがたい。手入れをきちんとしていく責任も感じる」。組合員で、かやぶき職人の松澤朋典さん(45)は「茅場の維持は動植物の保全、炭素の固定、水源かん養などにもつながる。地域の宝として手入れが続いていけば」と話した。
同村では10月、草原の価値や存在をアピールし、保全などを考える「全国草原サミット・シンポジウム」が開かれる。