保護猫が社員!? 松本に会社設立

「地元に保護猫活動広めたい」 けろウェイ合同会社 今村友美さん

社員は保護猫!? けろウェイ合同会社(松本市大手2)のキャッチコピーは、「保護猫がはたらく会社」だ。どんな仕事をしているかというと─。
代表社員の今村友美さん(49)は、捨て猫などを保護し、新たな飼い主につなげている。保護猫をモデルにデザインしたパッケージのコーヒーやTシャツといったグッズを販売、医療費や餌代などを稼ぐシステムだ。パッケージデザインは今村さんが担当する。
横浜で暮らしていた時、1匹の猫を拾って飼い始めたのが、保護猫活動のきっかけになった。その後、一般社団法人「LOVE&Co.」を設立、信州移住を機にけろウェイを設立した。「保護猫や保護犬を飼う選択をする人が増えれば」と期待する。

会社を支える推し猫グッズ

2006年、雄猫けろ(現在18歳)を拾ったのが、今村友美さんが猫に興味を持つきっかけになった。もともと犬派で、猫の知識があまりない。調べるうちに、野良猫が大変つらい生き方をしていることを知った。「野良猫を見るたび、気になって仕方がなかった」
横浜の自宅に野良猫を連れ帰り、個人で飼い主探しを始めた。仕事をしながらでは、なかなか精力的な活動はできない。保護猫活動一本でいきたいが、会社を辞めたら資金をどうするか─。
商品購入が子ども支援の寄付につながる活動がヒントになった。「猫バージョンでできないか」。保護した猫をモチーフに商品をデザインし、収益を得る方法を思いついた。
当時、動物医療器具を輸入する会社に勤務し、マーケティングを担当。イラストを描いたり、デザインしたりする仕事にも携わっていたことも、決断の支えになった。
グッズはドリップコーヒー、Tシャツ、クリアファイル、マグカップなどさまざまだ。ハンドメードの物もある。
一緒に活動する仲間が増えたため16年、一般社団法人「LOVE&Co.」を設立した。「クラウドファンディングによる資金調達と借金でスタートした」と今村さん。グッズ販売と並行し、これまでに130匹ほどを飼い主とつなげたという。
夫の翻訳家、小川公貴さん(50)の「自然のあるところで暮らしたい」という希望もあって23年7月、松本に移住した。12月に翻訳と保護猫活動をする「けろウェイ合同会社」を設立。LOVE&Co.の仕事を少しずつ移し、今年3月からは合同会社の一部門に。一般社団法人は休止した。
松本市内のマンションの一室を借り、店舗と保護猫の居住スペースを設けた。現在は9匹いる。横浜ではオンライン販売のみだったので、実店舗の運営は初めてだ。オープンは日曜日の午後1~6時だけだが、猫の世話、商品発送、商品作りなど、やることは多い。
父の日を前に、東京のパティシエとコラボレーションし、保護猫の1匹「そっくりとーさん」をパッケージモデルにした、ドリップコーヒー付きの焼き菓子詰め合わせを発売。8月8日の世界猫の日に向け、イベントも企画中だ。
保護猫にはそれぞれファンがいる。一番人気は黒猫の雌、おかみ。デザインが変わるたび“推し猫”グッズを買う人も多い。「保護猫が働く会社というキャッチフレーズの答えです」と今村さん。
完全室内飼育などが飼い主の条件という。猫は現在も東京方面に届けていて、松本地域での譲渡はゼロだ。今村さんは「地元の人にも知ってほしい」と力を込める。商品などの情報は=ホームページ=から。猫などの問い合わせはメール(info@love-and-co.net)で。