山形村の山の麓にある、知る人ぞ知る隠れ家のような古民家カフェ「まるます喫茶」(小坂)。週3日の営業で、コーヒー、そば茶、りんごジュース、そば粉のケーキなどのスイーツや、日替わりランチ(要予約)が楽しめる。
飲食だけでなく、畳の上で本を読みながら、小さな子どもと一緒にくつろいだり、ワークショップを体験したりもできる。「誰もがゆっくりできる場所をつくりたい」との思いから、店主・増塩理沙さん(40)の夫の生家をリフォームしてできた、温かな雰囲気の店だ。
昨年5月のオープンから1年がたった。「多くの人に支えられてきた」と感謝の気持ちを込めた記念イベントを、8日午前11時~午後4時に同店で開く。
多彩な交流生む場に多くの力
山形村唐沢のそば店に生まれた増塩理沙さんは、祖父母と一緒に過ごした経験を持ち、結婚後の今は夫の両親と同居中。自身と同様、9歳の長女も5歳の長男も「おじいちゃん、おばあちゃんが大好き」だ。宅老所で働いた経験などから「小さい子から高齢者まで、いろんな世代が一緒に過ごせる場所があれば」と考えていたという。
義父の勝義さん(80)が創業し、現在は夫の勝美さん(50)が代表を務める「丸増設備」の隣には、勝美さんの生家があり、長く空き家になっていた。理沙さんは「集いの場として活用したい」と考えていたが、「反対されるのでは」という思いも拭いきれず、4年ほど前から1人で少しずつ片付け。2年ほど前、ようやく家族に「本を読んだりご飯を食べたりできる場所を作りたい」と打ち明けたという。
勝美さんらは、初めは全面的に賛成ではなかった。だが、理沙さんが「ここに、これくらいの、こういうのが欲しい」とキッチンカウンターや仕切りなどのイメージを熱心に伝えると、「何やるだか、全然分からねえわ」と言いながらも、職人かたぎの勝義さんが中心になってリフォームが始まった。
勝美さんは本棚を手作りしたり、義母のむつみさん(76)もパッチワークのカバーを譲ってくれたりと、家族みんなが協力。知り合いの業者からはリフォーム用の板や床の端材などを、「家を片付ける」という知人からは冷蔵庫や棚などを譲ってもらった。
2階を小さな図書室にしようと本を置くと、訪れた人が寄付をしてくれるようになり、絵本や児童書、小説、実用書など、さまざまなジャンルの本が並ぶようになった。
他にも「しまい込んであった」という引き出物の食器やポット、「子どもが小さい頃使っていた」というパズルやクレヨンなど、「よかったら使って」とさまざまな物が持ち寄られた。理沙さんは「新たに買った物はほとんどなく、頂き物でできているようなもの。本当にありがたい」と感謝する。
その場所を利用して気楽な交流をしたいと、知人らを講師に手芸教室や絵本の読み聞かせなどを実施。雑貨や手芸品、地元産の蜂蜜やジュース、絵本や児童書の古本などの委託販売も行い、いろいろな世代の人が集まり始めている。
レンタルスペースとしての貸し出しや同所を利用した講座開催にも応じている。理沙さんは「たくさんの人に協力してもらったこの場所も、頂いた物も、もっと生かしていきたい」と話す。
8日は、喫茶営業の他、焼き菓子や野菜、絵本、雑貨などの販売や、ビーズブレスレットのワークショップ、タロット占い、読み聞かせ(午後1時半)など、盛りだくさんのイベントを予定。アートユニット「ROJI」も登場して「楽しめる何か」をする予定だという。同店の詳細や問い合わせはインスタグラムから。