
月に数回、インターネット上にオープンする「スナック新卒」。音声配信サービス「ポッドキャスト」の番組で、社会人1年目の女子2人が、仕事や暮らしについて屈託なくおしゃべりする。新たなつながりもできるという番組は、二人の大事な「居場所」だ。
木村彩子さん(23)と布袋沙羅さん(23)は、ともに都市部の出身。1年前、同じ大手精密機器メーカーに就職し、塩尻市で暮らし始めた。しばらくは互いに知っている程度の間柄だったが昨夏、同市の大門商店街の空き店舗で行われた漆喰塗りのワークショップで偶然、顔を合わせた。「同期だよね」。そこから話が弾んだ。
壁を塗るこてを動かしながら、口も止まらない。脇から「ラジオやらない?」と声がかかった。声の主は、ワークショップを企画した湯浅章太郎さん(44)。空き店舗を収録スタジオ付きのゲストハウスにする計画で、そこで二人がしゃべる番組を思いついた。
「地方に飛び込んだ社会人1年生が話す番組はニッチ(隙間)と聞いて興味が湧いた」と布袋さん。木村さんは「新しいことに挑戦したいと思った」。昨年8月に開業した「宿とスタジオ KICHI」で収録が始まった。番組名は思いつき。決め手は「スナック」と「新卒」という言葉の組み合わせの面白さで、二人ともスナックに行ったことはない。
番組で木村さんは「キムコ」、布袋さんは「ポテサラ」と名乗り、ざっくばらんにさまざまなことを話す。自分たちのこと、仕事のこと、街のこと…。お気楽な話からシリアスな悩みまで。責任を自覚する戸惑いといった、「社会人1年目」を経験した人なら誰でも覚えがある話題も織り込まれる。
リスナーは思った以上に広がっている。会社の同期や学生時代の同級生といった顔見知りから、会ったことがない人まで。開始から半年、ファンレターが届いた。
恥ずかしさもあるという二人だが、気後れより先に刺激に引かれている。「いろんな人とつながり直せたり、出会えたりできている」と布袋さん。「知らない土地で居場所ができた」
木村さんは初めての地方暮らしに「代わり映えのない、灰色の日常をイメージしていた」という。それが「スナック新卒で彩りがある生活になった」。
最近は音声編集も自分たちでするように。4月以降も番組名は「新卒」で続け、ほかの地方の同年代とも、仕事や街の情報をやりとりしたいという。「塩尻のことももっと知りたいし、知ってもらいたい」。番組は音楽・音声配信サービスのスポティファイ、ユーチューブなどで聞くことができる。