募金で命救われたJCAカーサービス松本芳川店の看板猫ピッちゃん

僕の名前は「ピッちゃん」。キジトラの雄、年は12歳(推定)。量販店に併設するカーピット「JCAカーサービス松本芳川店」(松本市野溝西3)の看板猫です―。
店内に置かれたクッションに寝転び、日光浴をするピッちゃん。同店の客だけでなく、量販店の客も名前を呼んだり、なでたり。ファンは数百人といい、クッションやフードを差し入れる人もいる。
「何かあったときのために」と、3年ほど前から置かれている募金箱。昨年8月、食欲がなくなり病院へ。慢性腎不全と診断され、募金箱を開け、診療代に充てた。濱郁哉店長(55)は「多くの人に支えられ、感謝しています」。
ピッちゃんと触れ合うと皆笑顔になる。もふもふの癒やし効果は絶大だ。

愛し愛され 人の支えに感謝

「みなさんに愛されているピッちゃんはとても幸せなネコです。これからもピッちゃんをどうぞよろしくお願いいたします」。JCAカーサービス松本芳川店の一角にある「ピッちゃん」コーナーの、張り紙に書かれている内容だ。
コーナーには他に募金箱、缶バッジがある。募金箱は3年前、顧客が「お金が必要になったときのために」と置いてくれた。缶バッジは、寄付してくれる温かい心に感謝を伝えたいと、濱郁哉店長が作った。
ピッちゃんはもともと野良猫。2017年にふらっと同店に立ち寄った。「真冬でかわいそう」と濱店長が餌をやると、時々来るようになった。最初の2年ほどはシャーシャーと威嚇し触れなかったというが、ある時からなでさせてくれるように。そこから濱店長への信頼が急激に高まり、19年からは毎日顔を出すようになった。
タイヤピット、カーピットにちなみ、名前は「ピッちゃん」に。去勢は済んでいた。「行ったり来たりの2年間で、誰かが済ませてくれたのでは。地域猫として生活していたのではないか」と濱店長。
そんなピッちゃんが昨年夏、体調を崩した。「暑くて食欲がないのかな」という程度だったというが、「いつもと違う」と動物病院へ。慢性腎不全と診断され、歯も治療することになった。ここで募金箱が役に立った。約5万円入っていたといい、「ありがたく使わせていただいた」。
治る病気ではないので現状維持のため、毎月1回治療に通い、検査を受け、点滴をしたり毎日飲む薬を処方されたりする。治療法が合い、今は落ち着いているが、昨年10月は数値が悪く、「冬が越せないかも」と思ったほどだったという。
濱店長は15年ほど前から地域猫の活動に関わる。餌をやる、TNR(Trap=捕獲する、Neuter=不妊去勢手術を施す、Return=元の場所に戻す)をする他、松本市岡田下岡田の自宅では、耳が聞こえないといった障害があったり高齢だったりする、外では生活できない猫4匹と暮らしている。
「猫は大好きだが、ペット感覚はない」と濱店長。ピッちゃんも同じで、「一つの命と向き合っている」。命を尊重し、できることを精いっぱいやっているといい、「元気でいてくれたらいい。構い過ぎないからいいのでは」と話す。
実はピッちゃんは、人間の男性と子どもがちょっと苦手だ。高い声と優しい触り方をする女性にはなつきやすいが、声が低かったり、荒っぽくなでられたり、急に大声を出されたりすると、警戒することもある。距離感を大切にしているようだ。
ピッちゃんに癒やされ、笑顔になる人がいる。店の定休日に、世話をしてくれる地元の人もいる。濱店長は「少しでも長く生きてほしい。支えてくれる人たちに、感謝の気持ちを伝えたい」。ピッちゃんがいるだけで空気が和む。癒やしパワーは大きい。