周囲巻き込み情報発信3周年 信大生の海沼さんら発行「信州Charm」

「学生に信州で働くという選択肢を」

「大学生を信州人に!」がコンセプトのフリーペーパー「信州Charm(チャーム)」が、創刊3周年を迎えた。制作の中心メンバー、信州大繊維学部の海沼怜さん(23)には、意識の変化が生まれたという。
「自分のやりたいことより、どうすれば周りを巻き込めるかを考えるようになった。互いにウィンウィンな関係をつくることが大事だと気付いた」
やりたいことは信州の魅力発信。その実現に向け、信州チャームの制作以外にもつながりを求めた。企業に営業活動をかけたり、イベントを開いたり。休学して高校生とのフリーペーパー制作にも取り組んだ。
並外れた行動力で地域活動の新たな形を模索し、卒業後の活動も見据える。

全て学生が担当 半年ごとに発行

海沼怜さんは諏訪市出身。豊かな自然と歴史の中で、地域の文化や物語に触れて育った。「小さい頃から信州が好きでした」
大学進学後、同世代の多くが卒業と同時に県外へ出ていく現状を知る。「自分が魅力を感じてきた信州の面白さをもっと学生に知ってほしいと思った」
信大に入った2022年の夏、「魅力」という意味の英単語を冠した学生主体のグループ「信州Charm」をつくり、同名の学生向けフリーペーパーの制作に動き出した。
企画、取材、撮影、執筆、デザインまで、全てを学生が担う。飲食店や観光地、特産品、プロスポーツ、地域企業まで取り上げる。学生と地域社会をつなぐ架け橋を目指した。
23年春に創刊号を発行。フルカラーの冊子を半年ごとに3千~4500部発行し、県内の大学や店舗などに置いている。これまで特別号を含め8号を重ねた。

取材通して知る地域の人や物語

現在の制作メンバーは9人。取材を通して出会う人々の温かさや、地域に根付く物語こそが大事だと、海沼さんは考えている。
「ネットで調べた情報ではなく、実際に人に会って話を聞くことを大切にしている。学生が地域と関わることで、地元のお店や企業の人たちが元気になる。その笑顔を見た学生が、信州っていいな、ここで生きていきたいなと思う。そんな循環をつくりたい」
海沼さん自身、諏訪清陵高校に通っていた頃から、地域活動で企業の人たちと触れ合った折に、「人手不足」という言葉を耳にしていた。信州チャームでは、取材者に地域の良さを認識してもらうことも意識した。「信州に住んで働くという選択肢があることを、もっと伝えたいと思った」

信州の魅力発信 今後も広げたい

魅力発信の手段は、信州チャームの制作を核にさらに広がっている。
例えば、企業への営業。高校時代の地域活動でつながりのあった企業を中心に、自ら電話をかけた。「自分たちの活動がどう信州の発展に貢献できるかを考えてきた」という思いに共感する企業から広告掲載で支援を受けた。
大学2年時には、休学して高遠高校(伊那市)で特別講師に。1年をかけて高校生とフリーペーパー制作に取り組み、地域発信の方法を伝えた。
復学後の昨年6月には、長野県の魅力を話し合うイベント「長野県魅力発見大会議」を開き、地域とのリアルな交流の場もつくった。
卒業後は県内で公務員として働きながら、信州チャームの運営にも関わり続ける考えだ。社会人として地域を支えながら、学生視点の発信の継続を模索する。
「人と向き合い続けることで、信州の魅力はもっと伝えられる」。揺るぎない覚悟を静かに語った。