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[創商見聞] No.1 倉田 敦志(癒し処倉田屋 代表)× 渡邊 悟(ボアソルチ 代表)

松本に新しい価値をつくっていきたい

―創業のきっかけは。
倉田 新卒で会計事務所に就職しましたが、1年目ということもあり、お客さんから叱られることはあっても感謝されている実感がありませんでした。自分の存在意義を感じられなかった時、「リラクゼーションによって人に喜んでもらえたら、働きがいや生きがいになるのかな」と思うようになりました。こんな時代だし、手に職をつけたいという気持ちもありました。
渡邊 僕はサラリーマン時代、扱っている商品に不満を感じていましたが、自分個人ではどうにも変えられませんでした。それを会社のせいにしていましたが、「それじゃ駄目だな」と思い、「やる時は自分の責任でやりたい」と起業を考えました。
加圧トレーニングを始めたのは、もともと体を動かしたり鍛えたりすることが好きで、しかも松本ではまだこのトレーニングが行われていなかったので、「これだ」と、取り組みました。
―創業に対する不安は。
倉田 自分の技術に自信を持っていたので、あまりなかったですね。脱サラしてから3年間、専門学校で他の誰よりも死にものぐるいで勉強しました。技術は強みです。
渡邊 周囲には心配されましたが、不思議に、良いイメージしか浮かばなかったです。金銭面でも松本市の家賃補助(※1)を受けたり、松本商工会議所に開業までいろいろな準備を手伝ってもらったりし、心強かったです。
倉田 家賃補助もそうだし、チャレンジショップ(※2)も格安で、「こんなに支援してもらえるんだ」と思ったよね。
渡邊 創業した後も、小規模事業者持続化補助金(※3)が利用でき、それを使って内装を変えたことで、よりプライベート感が出せ、お客さんの満足度が上がったということもありましたね。

長野県なら「倉田屋」と言われるように

―事業を継続していく秘訣(ひけつ)は。
倉田 人材育成は大切ですね。指名によりお客さんがつく仕事なので、僕は3つの観点を重視しています。それは、「健康」「人柄」「技術」。この中で唯一、教えられるのが技術。だから技術はなくても、まず健康と人柄をみてから採用します。健康も意外と重要で、人柄が良くても健康でなければ続けられないし、健康であってこそ能力が発揮されると思うんですよね。でも教えるといっても、リラクゼーションの世界で技術を伝えるのは簡単ではないですがね。
渡邊 僕も人材の確保や育成は課題です。教え方や接し方はどう工夫されていますか。
倉田 押し方、もみ方は言葉ですぐ伝えられるものではないので、昔は手探りでした。(プロ野球巨人終身名誉監督の)長嶋監督じゃないけど、「球が来たらバァーンと打て」みたいに、「ぐっとやるんだ」などというふうになっちゃう(笑)。
ただそこで覚えが悪かったとしても、「どうして覚えが悪いんだ」とは思わないようにしています。もう少しマニュアルを分かりやすく作り直すとか、かける言葉を変えてみるとか、自分の方が工夫するようにしています。
―今後の展望は。
倉田 今、国でもヘルスケアやストレスケアの充実に取り組んでいるので、倉田屋でも対応していきたいです。ストレス社会にはリラクゼーションの需要はあると思うので、さらに技術や接客の力を高めて、「長野県なら倉田屋」と言われるようにしたいです。
もう1つ、健康寿命を延ばすという意味で考えているのが姿勢。姿勢が悪いと脊柱の中の脊髄を圧迫するので、良い姿勢は健康寿命を延ばす大きな条件だと考えています。今、バランス整体というサービスを提供しているので、今後は姿勢改善教室などもしていきたいですね。
渡邊 松本はまだパーソナルトレーニングの文化が根付いていないので、自分が新しい価値をつくっていきたい。「体を鍛えることはプラスでしかない」と自信を持ってやっているので、そこをもっと伝えようと思っています。
あと、店舗展開については、2店舗目を出してみて、人通りの多さや、駐車場の広さなど、場所はやっぱり大事だなと思いました。今は安曇野の方にも可能性を感じています。今あるお店でスタッフを増やすことも考えましたが、それはこっちの都合で、お客さんへのサービスの質は下がる。それだけはやめようと思っています。
倉田 僕も店舗はもう少し増やしたいですね。ただ過信しないように気をつけています。以前、「なんだか知らないけれど売り上げが上がるな」と思った時期がありました。その一方、従業員は辞めていく。後で振り返り、従業員がそれだけ頑張ってくれていたことが分かりました。それに気づけなかった時期は、苦労ばかりで、働いていても全然おもしろくありませんでした。売り上げが上がった時に、当たり前だと思っちゃ駄目。本当に従業員のおかげです。
自分はお客さんや従業員、商工会議所、市の商工課、そして家族と、周囲に支えられてここまできた。私も40歳を過ぎたので、いつまでも甘えているのではなく、そろそろ支える側に回らなくてはいけないと思っています。

※1家賃補助…商工会議所の指導を受けた新規開業者の家賃負担を軽減するための制度。
※2チャレンジショップ…松本市と松本商工会議所が2007年まで行った創業支援。実践の場として格安で店舗を貸し出した。
※3小規模事業者持続化補助金…経営計画に基づいて実施する販路拡大などの事業に対して、審査の上、その費用を国が補助する制度。

【くらた・あつし】 押すボディケアの店 癒し処 倉田屋代表 長野県松本市出身
大学卒業後、一度就職したのち退社。東京の専門学校で3年間、鍼灸(しんきゅう)と指圧、按摩(あんま)マッサージを学ぶ。帰郷後、商工会議所のチャレンジショップなどを経て、2004年7月、松本市で「倉田屋」創業。現在、松本、塩尻、安曇野、大町、岡谷市で6店舗経営。

【わたなべ・さとる】 加圧トレーニングスタジオ ボアソルチ代表 宮城県仙台市出身
大学卒業後、就職した会社の異動で松本へ。3年間の勤務ののち一度東京へ戻り、創業のための準備を始める。2011年11月に松本市渚で「ボアソルチ」創業。16年2月に2店舗目の「カンビオ」を松本市高宮に出店。