厳寒に煌めく「天使のささやき」
厳寒期に見られ“冬の精”を連想させる「ダイヤモンドダスト」。その神秘的な光彩は、寒さの厳しい信州でも見るのは極めて困難だ。今冬、撮影に挑んで6回目となる1月9日朝、美ケ原高原でようやく憧れの光景に出合った。
午前8時35分。武石峰から焼山付近の気温は、氷点下11.8度。「今回も断念か」と思った矢先、望遠レンズを構える目線の先に一瞬キラっと小さな光が煌(きら)めいた。太陽を正面に見ながら撮影位置を移動してみると、煌めきの密度は次第に増し、突然まぶしい太陽柱(サンピラー)が現れた。キラキラと無数の光が浮かび舞いながら静かに降り注いでいる。まるで天からの宝石の贈り物のように映る。天使が舞うような幻想的な光景は別名「天使のささやき」と呼ばれている。
ダイヤモンドダストは、大気中の水蒸気が昇華してできた小さな氷の結晶で「細氷(さいひょう)」と呼ぶ。日が当たると太陽柱が現われ、光線の角度で金色や虹色に輝くことも。気象上は、降水現象の一つで、青空から降り注いでも記録上は「雪」となる。発生は、氷点下10度以下で快晴無風、湿度が高いなど全ての条件が合わないと出現しない。撮影や観望は、オーロラ以上に難しいと言われている。
(丸山祥司)