厳寒の自然の造形「窓霜美術館」(美ケ原高原)

窓ガラスにできた階段模様の窓霜が、昇った朝日を浴びて黄金色に輝き異次元の世界を連想させる=ニコンD5、ニコンAF MICRO NIKKOR 105ミリ、1月20日

朝日に照らされ輝く「黄金の階段」

標高2034メートルの美ケ原高原・王ケ頭ホテル(松本市)の厳寒の朝。窓ガラスにびっしりと霜がつく。「窓霜(まどしも)」または「霜の華」と呼ばれ、その造形模様は「美術館」さながらだ。
1月20日、氷点下11度。昇った朝日に照らされスピリチュアルな雰囲気を漂わせて輝く、「黄金の階段」に出合った。
窓ガラス全面にできた窓霜の片隅に、輝く階段状の模様を見つけた。はがき大の造形を105ミリのマイクロレンズで切り撮った。
「黄金の階段」…。同じタイトルの名画が脳裏でオーバーラップするが、画家の名前が思い出せない。調べてみた。英国の美術家のエドワード・バーン=ジョーンズ(1833~98年)の作品だった。
窓霜の撮影は、朝日などの自然光で撮る方法と窓の外に偏向板を置き、室内から偏向(PL)フィルターや偏光板を通して撮る二つの方法がある。
気温と湿度の繊細芸術で、最低気温の違いにより現れる模様も違う。氷点下10度では、椰子(やし)の葉や花や雲など比較的大柄な模様が現れ、ステンドグラスや万華鏡の世界を連想させる。氷点下15度になると、全体に模様がスリムになり細部の描写に精悍(せいかん)さが現れてくる。氷点下20度。描写が極限状態に近づき、より繊細さを増し、心理描写が際立ってくる。
窓霜のはかない命の作品撮影は、感性と表現力が問われ、いつも新鮮で飽きることはない。
(丸山祥司)