[創商見聞] No.39 篠原 将宏 (カフェいずみや代表)

奈良井宿に喫茶店をオープン、観光客の憩いの場に

―サラリーマンを辞め、喫茶店を奈良井宿の実家にオープンした
 奈良井宿に生まれ、大学の4年間を除くと、ずっとここに暮らしてきました。そして、これからもこの場所で暮らしていくと決めたとき、大好きな地元を少しでも盛り上げることができないかと考えたのが、喫茶店をオープンした一つのきっかけです。
 また、奈良井宿は延長1㌔ほどあり、歩くと意外に距離がある。家の外にいると「長いね」「あそこまでは行けないね」という声を聞きますし、実際に途中で引き返してしまう人も少なくありません。そこで、途中に喫茶店があれば休んでもらえるし、奈良井宿の散策を楽しんでもらえるんじゃないかと考えました。もちろん地元の皆さんにも寄っていただければうれしいですし。家族の反対がなかったのも、踏み切れた要因の一つですね。
 ただし、商売をするのは初めて。一人でやっていると、視野が狭くなっているなと思うことが、これまでも結構あったんです。今の状態を俯瞰(ふかん)的に見るように気を付けています。
―築200年の古民家は非常に趣のある建物
 喫茶店を開くに当たってこだわったのは、この歴史ある建物を生かすことでした。この壁は祖父が直した、この部分は父が直した、そして私がリフォームした部分―。築200年という時代の流れを感じてもらえる造りになったと思います。自分がイメージした室礼(しつらい)にするために、ぴったりのものが売っていなくて、結局、DIYでほとんど自分でやりました。おかげで手作り感が出ましたし、開業資金は抑えることができました。
 この空間で楽しんでいただくのは、ハンドドリップで時間をかけて入れたコーヒーです。ゆったりとくつろいでいただけるように、いろりを囲んだソファ席も設けました。古いはりや家の造りなど、今の時代には逆に新鮮でインスタ映えするかもしれません。ぜひ、多くの方に訪れていただきたいですね。
 当面は、コーヒーと手作りケーキを提供します。将来的には、喫茶店の枠を超えない範囲で軽食を提供していくことも考えています。
―利用した商工会議所の支援等は
 新聞で、塩尻商工会議所主催の創業塾開催の告知を見て、それを受講したことで、つながりが持てました。全6回のスクールでしたが、創業に当たっての心構えなど、大変勉強になりました。
 一番大きかったのは、一人でやっているとモチベーションを保ち続けることが本当に大変なんです。創業塾の講師や仲間の皆さんから、大きなエネルギーをもらうことができました。
 実は、商工会議所のことはあまり知らず、創業を考える自分たちが利用できる団体だとは全く思っていなかったんです。大企業の社長さんたちが集まるところなのかなと。創業塾受講後も、レジのことなど、分からないことをいろいろ教えていただいています。自分で一からやってきたけれども、もっと早く相談に行っていればよかったなと思っています。
―奈良井宿の魅力は
 奈良井宿は、重要伝統的建造物群保存地区として、昔からの景観が守られている街並みです。しかも、ここで人々がリアルに生活をしている。そんな宿場はわずかで、本当に貴重です。
―今後の事業展開は
 今、奈良井宿には国内からだけではなく、インバウンドで多くの外国の方も訪れています。外国の方は夕食の後、ちょっと飲みに出かける人も少なくありません。そこで、夜はカフェ&バー形式にして、静かにお酒と会話を楽しんでもらえる場所にするのもいいですね。また、ホワイトシーズンも、人を集めることが何かできるんじゃないかなと考えています。 
とにかく、まだオープンしたばかり。これからいろいろなことがあると思いますが、始めた以上は、続けていくことが一番大事です。

【しのはら・まさひろ】34歳。塩尻市奈良井出身。大学卒業後、証券会社に10年間勤務。退職して奈良井宿の実家を改装し、2019年9月に「カフェいずみや」をオープン。