秋空に現れた神秘の「天使の翼」(松本市内田)

秋模様の大空のカンバスに現れた、神秘的な「天使の翼」を連想させる雲。彼岸花が彩りを添える=ニコンD5、ニコンEDAF-Sニッコール28~70ミリ、PL

秋便り届ける雲と彼岸花

青空が広がった9月29日午前、松本市内田の農道沿い。大きな一団となって西から東へゆっくり流れる、美しい「うろこ雲」に目が留まった。
うろこ雲の中央に楕(だ)円状にぽっかり開いた青空の窓。その中に羽ばたく「天使の翼」を連想させる、不思議な光景に出合った。神秘的な雰囲気が漂う「天使の翼」を見上げていると、なぜか次第に心が癒やされていく。かすかに伝わってくる天上のメロディーが聞こえたような気がした。私的ではあるが、アイルランドの女性歌手エンヤの曲「エンジェルス」が脳裏で重なる。この神聖な光景に遭遇したのは、時空の奇跡だろうか。
この神秘の光景を演出した、秋を代表するうろこ雲は、魚の鱗(うろこ)に似ているため、そう呼ばれる。他にさば雲、いわし雲とも。気象学的には巻(絹)積雲の一種に分類され、高度5000~1万5000メートルの上空に現れる。詩歌の世界では秋の季語。人の心の奥深くまで“秋便り”を届ける雲である。
撮影地は彼岸花が咲く、秋の風情が漂う刈り取りが済んだ田んぼの土手。1本離れて咲く花を被写体に、土手下の地面にカメラを付けて撮影した。彼岸花は曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の別名でも知られる。花言葉は「情熱」「想うはあなた一人」「悲しい思い出」など多数ある。
(丸山祥司)